国務総理に内定していた元中央日報主筆の文昌克氏が6月24日、就任を辞退した。文氏は辞退を発表した場で「国の統合と和合に貢献しようとしたが、総理指名後、対立と分裂が深化したため不可能になった」と説明した。
一方で文氏は、指名者である朴槿惠大統領の勧告による辞退であることもほのめかせた。また、「国会は聴聞会を開催すべき神聖な義務がある。その法律は国会議員たちが直接作ったものだ」と述べた。これは国会、とりわけ与党セヌリ党への痛烈な皮肉といっていい。
文氏は、自身の出身業界であるマスコミに向けても言葉を残した。「自由民主主義は誤導される世論に揺らいではならない。言論が真実を無視すると民主主義には希望がない」、「メディアの義務は事実報道ではなく真実の報道だ」といった言葉は、過去の文氏の発言を恣意的に取り上げ、まるで”魔女狩り”でもするように批判したメディアへ向けて放った一矢だったのではなかろうか。
韓国では今、朴大統領が「煽動メディア」の歪曲報道に屈したという声が高まっている。国家が偽の情報と、それに踊らされて騒ぐ国民に屈したということだ。
この事態を受け、朴大統領の支持層であった保守派からも批判の声が出ている。もともと朴大統領については「ほかの人よりはまし」という程度の脆弱な支持しかなかったが、それが崩れたといっていい。
「あいまいだが大統領になったら韓国の憲法精神にのっとって自由民主主義と市場経済、そして韓国主導の統一をなしてくれる」と、大統領就任前まで保守派は期待していた。しかし今は、保守派が朴大統領と対立するような状況になっている。ひいては「戦争中の国の最高司令官として不適格」、「人格を疑う」といわれる段階にまで来てしまったのが今の朴大統領だ。
朴大統領自身が変わってくれることが最善ではあるが、それがまったく期待できない今、国民は大統領が変わるように、一種の圧力ともいうべき叱咤を加えなければならない。
中国の習近平国家主席が3日から韓国を訪問する。国賓待遇である。朴大統領は経済的な側面から対中関係を重視し、中国からは経済使節団も習主席に同行するなど、両国の経済的なつながりは強い。
貿易を中心とする経済構造上、韓国は中国とは関係を深めざるをえない。だからといって、友好だけを強調してはいけない。韓国は中国に対して言うべきことが多い。
まず、64年前に起きた6・25戦争(朝鮮戦争)に対する謝罪要求だ。当時、戦争に「不法介入」したのが中国だった。「義勇軍」の形をとっていたものの、中国の関与は明らかだ。北韓からの侵略に手を貸し、多大な被害と分断状況をもたらした中国の国家主席に対し、国民は声を上げるべきだ。
もう一つは、中国による韓国人拉致への関与である。これは北韓の元スパイである元正花が法廷でも証言している。韓国人の拉致に、北韓の保衛部と中国の公安がかかわっていたということだ。同様の問題を抱える日本は、特定失踪者の捜査も北韓に求めている。ところが韓国政府は、法廷で事実であると認められた自国民の拉致にも黙ったままだ。統一への支持もとりつけておかねばならない。
韓国政府が動かないのであれば、国民は国連をはじめとする国際社会を動かして韓国政府に圧力を加えなければならない。中国で人身売買されている脱北女性のことも同様だ。
すでに明らかになったように、朴大統領は、それが扇動されたものであっても世論になびく。人権擁護は現代では普遍的な価値である。国民は、従北左派以上に大統領に恐れられる存在にならなければならない。
朴大統領には、人事問題をはじめ諸問題の解決に正面から向き合ってもらいたい。解決を先送りにしたり、反対派におもねって中途半端な幕引きをするのではなく、憲法精神や法にのっとって、正々堂々と乗り切ってほしいものである。動かなければ、国民が行動するのみだ。 |