洪熒・本紙論説委員
現代韓国政治の現状について、政治思想戦の観点から見てみたい。
金大中・盧武鉉政権を出現させた歴史とその左派政権の10年間は、韓国版「文化大革命」の時代であった。韓国における左翼は、「主思派」(主体思想派)や「従北勢力」と呼ばれるが、彼ら韓国版「紅衛兵」は毛沢東の紅衛兵以上であった。
彼らは、イタリアのマルクス主義思想家アントニオ・グラムシ(1891―1937年)が主唱した「文化ヘゲモニー」あるいは「文化陣地」という戦略を最も忠実に実行し成功した。
グラムシは次のように言う。「まずは文化を変えよ。そうすれば熟した果実のごとく権力は自然と手中に落ちる…ただし、文化革命には種々の制度―芸術、映画、演劇、教育、新聞、ラジオなどの新媒体―転換のための『長い長い工程』を要する。それらを一つひとつ慎重に攻め落とし、革命に組み込んでいくことが肝要だ。そうすればやがて人々は革命を理解し、歓迎さえするようになる」と。
金大中・盧武鉉政権の10年間で国家的反逆体制が完成した。その前の金泳三大統領は、それを導いた「左翼の宿主」だ。もちろん、その背景には、北だけでなく汎社会主義陣営のさまざまな工作があった。
例えば中国共産党は、近年韓国の若手学者を中国に招待し、親中勢力化工作をやっている。従北勢力は、将来を心配して中国に付こうとして今や「従中勢力」になりつつある。彼らが韓国の「中国化」を図っている。
韓国野党の左傾化は恐ろしい。第1野党の民主統合党の党歌の作詞者と作曲者が、92年に発覚した大型スパイ事件「南韓朝鮮労働党中部地域党事件」の連累者である。また統合進歩党(旧民労党)は韓国の国歌「愛国歌」の斉唱を拒否している。
民統党の党歌作詞者は李哲禹・元ヨルリンウリ党議員で、李氏は1992年「朝鮮労働党」に現地入党した後、党員符号を付与された。「現地入党」とは韓国で現地のスパイを通じて入党した後、「朝鮮労働党」が追認することを指す。
民統党の党歌作曲者の尹ミンソク氏は、「金日成大元帥は人類の太陽」、「韓民戦10大綱領」などの作曲者だ。尹氏は92年「朝鮮労働党中部地域党」傘下団体「愛国同盟」に加入。左翼活動のため国家保安法違反で4回拘束された。
朝鮮労働党「中部地域党」事件は、労働党序列22位の李善実(2000年死亡)や現在「統一運動家」として活動中の金洛中などが95年に共産化統一を為すという戦略目標で暗躍した建国以来最大のスパイ事件だった。
平壌と従北勢力は、全斗煥大統領に光州で市民と学生を殺した「殺人鬼」というレッテルを貼る謀略に成功した。その結果、彼らは「ファッショ政権と戦う民主化勢力」となった。それが金大中・盧武鉉反逆政権の誕生に結びついた。
北韓は6・25動乱以降、軍事優先路線を歩んで破綻した。経済優先戦略で成功した韓国に対し、北は韓国の内部崩壊を追求。「民族共助」戦術を駆使している。
韓国メディアの9割はグラムシの末裔が支配している。例えば「朝鮮日報」は、韓国の代表的保守新聞と思われているが、実はそうでもない。「朝鮮日報」も10%ほどの左翼が朝鮮日報の肝心な部分を押さえているのだ。もし「安倍首相は極右ではない」などと書けば、社内の「検閲」を通れない。
韓国の一部民衆は、共産主義勢力の謀略によって、「反日運動」へと駆り立てられた。よく「反日感情」といわれるが、感情というよりイデオロギーだ。今年3月に小規模個人店主らが加盟する「路地裏商店街保護消費者連盟」が始めた「日本製品不買運動」がさっぱり盛り上がらなかったのも、それを反証している。
共産主義は韓日関係の破綻を狙っている。そして、日本の左翼マスコミが反日運動を支援する。
そもそも「反日ビジネス」を始めたのは日本の左翼だ。こうした実状を日本人はほとんど知らない。
日本の「韓国・朝鮮専門家」らは、誤った認識に気づいたとしてもそれを反省し、是正しようとはしない。先ほどの光州事件に関する判決は重大事案であるから追跡調査をして当然なのに、日本では事実報道すらされない。
また韓中関係に関していえば、韓国では『蜃気楼か?中国経済』(金起秀著、日本語訳は晩聲社から出版)のような本がベストセラーになったのに、こういう保守的書籍は日本でまったく紹介されない。日本社会は韓国を客観的に、理性的に見てほしい。 |