趙甲済
金寛鎮国防長官は今年1月1日の指揮書信で、「憲法第5条2項に明示された通り『国軍の使命』を完遂することが国民の要求」と国軍将兵に呼びかけた。年初の「星友会」創立記念日の祝辞で金寛鎮国防長官は、「国軍は大韓民国の守護者」と言った。彼は先月の3月12日、戦争記念館の「6・25展示館」の再開館を観覧した後、6・25戦争参戦国家使節団の前で意味のある警告をした。
「韓半島での戦争はまだ終わっていない。北韓は核兵器を開発し、まだ武力で威嚇している状況なのに、南側国民の一部は北側の対南凶計をよく知らず北側の対南戦略に便乗して、6・25戦争(韓国戦争)を糊塗し、わが政府の政策を組織的に妨害する勢力がある。6・25戦争室は正しい歴史観と正しい国家観を教える教育の場になることを願う。」
金国防長官がよくやっていることの一つは政訓教育。「大韓民国を正しく教えること」に熱心だ。「北韓政権、従北勢力、韓国の現代史、自由民主主義に対して正しく教える」ことが核心だ。特に「従北勢力」を主敵と規定して集中教育する。
国防部は昨年、金長官の指示で、「高校韓国史教科書(現代史分野)の歪曲と偏向記述問題」を教育当局に提起した。国防部はその背景説明で、「間違った歴史教育のため軍の精神戦力と安保態勢が弱化する」と主張した。
<軍は「護るべき対象と立向かうべき対象」を明確に認識せねばならず、そのためには正しい歴史意識が前提となる。現在の歴史教科書は、わが将兵が「何を護るべきで、護るために誰と戦わなければならないのか」を混同させている。今の高校韓国史教科書は入隊前のわが若者たちに大韓民国への冷笑的観点と北韓への幻想を植え付けている。国軍を「護国の干城」でなく、国家発展を阻害し国民を弾圧してきた集団として罵倒している。歪曲された歴史教科書を是正するためには軍だけでなく全国民の関心と参加が求められる。>
金寛鎮長官は、近年の国防長官の中で最も所信のある指導者と言われる。李明博政府では珍しい成功的人事でもある。確固たる主敵観と私心なく独立的な人事、部下に責任を転嫁しない姿勢が尊敬される。昨年のアデン湾での海賊掃討作戦も彼の作品だ。この頃軍部隊を訪問すると従北勢力への将校団の姿勢に「殺気が漲っている」のが感じられる。金寛鎮長官のようにこれほど短い期間にこんなに大きな組織にここまで多くの変化をもたらした人も珍しいだろう。
軍隊は直・間接的に選挙を左右できるほどの票を持っている。約70万人の将兵は皆が有権者だ。ここに軍人家族(職業軍人と入隊兵士の家族)を加えれば約200万票になる。除隊軍人はほぼ1000万人だ。天安艦爆沈、延坪島挑発、済州海軍基地建設妨害などは現役と除隊軍人の投票者の心に影響を与える事件だ。現役への政訓教育をまともにやれば連鎖的に数百万有権者の投票性向に望ましい影響を与える。
セヌリ党が総選挙(4月11日)で序盤の非勢から逆転した背景にはこういう政訓教育の影響が明らかにあったはずだ。特に、江原道の9個の選挙区で民主党が全滅しセヌリ党が全勝したことはこの地域に多く居住する職業軍人とその家族の存在を抜きにして考えられない。従北左派連帯の反軍扇動が予期できなかった方からの報復を呼んだのかも知れない。
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