金成昱
1.国策研究機関である国家安保戦略研究所の南成旭所長が、事実上の一国・両制の統一方案を主張した。一国・両制は、一つの国家の下で韓国の自由民主主義体制と北韓の共産主義独裁体制の二つの体制が共存することで、自由民主主義体制で南北を統一しろという憲法の命令に違反する。
南成旭(*写真)所長は、ハンナラ党の統一政策TFの主催で、2月28日国会で開かれた「新しい統一政策パラダイムと接近方法」公聴会で、発表文を通じて「北韓に急変事態が発生したら、統一費用が2040年まで2525兆ウォン(2兆1400億ドル)に達する」と強調した後、「中国が韓半島の統一不可立場を固守し、北韓がわが国の資本主義に編入されない状態で、改革・開放路線を堅持する『混合型統一』をやれば、途方もない規模の費用は発生しないはず」と主張した。要するに、天文学的統一費用を減らすために、中国が韓半島統一不可の立場だから、北韓を大韓民国に編入させない「混合型統一」をしようということだ。
大韓民国憲法は、第1条、第3条、第4条を通じて北韓政権を平和的に解体し自由民主主義で統一することだけを合憲的統一と認める。つまり、北韓の共産主義独裁体制と南韓の自由民主主義が共存する一国・両制の統一は違憲で、自由民主主義という一つの体制に統一される一国・一制の統一だけが合憲だ。従って、北側の連邦制統一はもちろん、これを受容した6.15宣言の第2項と、10.4宣言、そして南成旭所長が主張したいわゆる「混合型統一」は全て憲法に違反する。(*右写真は南成旭の訳書)
何より、韓国政府と北韓政権が協商を通じて対等で平和的に統一するという北韓の連邦制、6.15と10.4宣言、「混合型統一」など一国・両制の統一方案はどう呼ぼうが致命的な罠が存在する。
一国・両制の統一方案は、北韓政権を反国家団体でなく国家的実体として認め、北韓の代表は北韓で選び、南韓の代表は南韓で選出して「統一議会」ないし「統一国会」のような南・北韓の合意体を構成することが前提になる。
多くの人々がこの幼稚な詐欺劇に騙される。南韓の代表は全部合わせれば北韓より多いだろうが、与党・野党、嶺南・湖南、保守・進歩、左派・右派で四分五裂されている。反面、北韓は「朝鮮労働党」の一党独裁がなされるためすべて朝鮮労働党(または、その友党)所属で、金正日政権の利害関係を代弁する。したがって韓半島全体を見れば、「統一議会」ないし「統一国会」の第1党は「朝鮮労働党」になる。つまり、北韓政権が自由民主主義という普遍的システムを受容れない状態で「6.15」や「10.4宣言」、「聯邦制統一」、あるいは言葉だけを少し変えた「混合型統一」に行けば、北韓政権が韓半島を支配することになる。つまり、平和的な赤化統一になるのだ。
北韓の対南戦略は簡単だ。南韓がこの平和的な赤化統一のため、「6.15宣言」や「10.4宣言」、「聯邦制統一」を受容れねばならないということだ。
いわゆる「混合型統一」は、北韓の改革・開放を前提とするというが、北韓の共産独裁体制を保障してあげる一国・両制の違憲的な本質は北韓の連邦制統一、「6.15」や「10.4宣言」と同じだ。
2.南所長の「一国・両制」論の前提となる天文学的な統一費用予想も誇張されたものだ。彼は発表文で、「北韓で急変事態が発生すれば、統一費用が2千525兆(2兆1千400億ドル)に達するだろう」と仮定した後、「これは昨年の大韓民国の国内総生産(GDP)の2倍の規模」で、「昨年を基準にして、国民1人当り5千180万ウォンの統一費用を負担せねばならない」とし、「こうなれば、2040年の大韓民国の国家債務比率は、昨年の33.8%の4倍に達する147%まで上昇し、世界最高レベルに達する」と主張した。
だが、統一費用は消滅性支出と投資性支出に分けられ、消滅性支出も飢えた住民を生かすお金(一種の矜恤費用)と飢えた住民を腹いっぱい食べさせるお金(一種の福祉費用)に分けられる。
多くの知識人は、北韓のGDPを南韓のレベル、または、南韓の70~80%水準まで引き上げる投資性支出も統一費用に入れるがこれは正しくない。投資性支出は、北韓の再建に投入される「新国家建設費用」であり、時間をかけてわれわれの能力に合うように、国民的合意によって進めるべきものだ。したがって、統一費用は飢えた住民を生かすお金、さらに飢えた住民を腹いっぱい食べさせるお金に限定するのが正しい。
黄長燁先生は、「統一すれば市場経済の導入と同時に北韓住民の人的移動を統制し、毎年100万トン程度の食糧を提供すれば10年内に南韓の70%水準に近接するはずだから、統一費用を別途に計算し心配する必要がない」と言ったが、これがまさに飢えた住民を生かすお金だ。したがって、北韓解放と同時に既存の人道的支援だけを一定期間続けば別途の費用は必要ないという計算も可能だ。ソウル大学統一平和研究所の金炳魯研究教授も、2010年10月20日「南北協力と統一費用、どう準備すべきか」という題のフォーラムで、統一平和研究所の4年間の世論調査結果を土台に黄長燁先生と同じ趣旨で発表した。
そして、飢えた住民を食べさせるお金、北韓住民の願い(?)である「白いご飯に肉のスープの問題」を解決するにはどれ程のお金が必要か? 2010年12月、国会立法調査処が出した「韓半島統一費用、争点と課題」という論文によれば、「北韓住民たちの期待水準が高くない」点を指摘し、「白いご飯に肉のスープ問題を解決するには大韓民国GDPの 1%程度で済む」と書いてある。GDPの1%は韓国経済に大きな負担になると言えない規模だ。
統一費用の計算で考慮すべきもう一つの重要な要素は「分断費用」だ。統一費用は、時間が経ちながら消滅する限時的費用だが、分断費用は統一されるまで持続的に要る。2007年の「国会予算決算特別委」が作成した「統一費用と統一便益」という論文によれば、2015年、2020年、2025年、2030年各々統一する時、分断費用と統一費用は毎年1兆3,123億ドルvs 8,577億ドル、1兆4,931億ドルvs 9,912億ドル、1兆6,837億ドルvs 1兆1,589億ドル、1兆8,886億ドルvs 1兆3,227億ドルが所要すると推算した。一言で統一費用が多いというが、分断費用はもっと多いということだ。
統一は、費用の前に天文学的な利益、すなわち統一利益を生む。「統一費用と統一便益」の論文と国会立法調査処が2010年12月に作った「韓半島統一費用、争点と課題」などの論文によれば、2015~2030年に統一を仮想した場合、10年間の統一費用はGDP対比6.6%‐6.9%だが、統一利益は、GDP対比11.25%の経済成長をもたらすと分析した。これは統一時期が早いほど経済的負担が減ることを意味する。
自由統一は、2.2倍の国土はもちろん、人口が7,200万人になり、フランス(6,400万)、英国(6,000万)を抜くようになる。分断のリスクが除去され国家信認度の上昇を通じて株価や企業の資産価値も上がるだろう。TKR・TSR・TCR・TMR・TMGRの連結で象徴される物流費や通行費の減少はもちろん、統一韓国が東北アジア経済協力のハブ(hub)になることも自明なことだ。北韓を新しい軽工業基地にする再建と特需を通じて得られる働き口は、長期不況や青年失業のような韓国の慢性病を一世代は解決してくれる。
統一利益や分断費用も考慮せず、統一費用の具体的区分もなしに作り上げた「天文学的な統一費用論」は科学的と認められない。何よりも、一国・両制のような違憲的統一論を正当化するため非科学的な統一費用論を動員するその背景が疑わしい。大韓民国の建国がそうであったように、統一過程で新しい勢力の形成と退行的既得権勢力の萎縮と退場は、避けられない歴史の進歩であると思われる。
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