今年開催が噂されている第3次南北首脳会談のカギを握るのは、やはり北朝鮮の最高権力者・金正日だ。金正日と3度会った朴在圭の考えを聞いた。
「金委員長は北韓の内部事情だけではなく、国際情勢を詳細に把握していました。経済難を打開するには米国と関係改善をして外部の支援を受けなければならないという事実もよく知っていました。韓国と米国が体制の脅威にならないこと、北韓現代化のための経済的支援をするという確信を金委員長に印象づけることが重要です」
「相互体制の尊重」と「内政不干渉」は、歴代韓国政府の対北政策の土台になっている。この二つの前提があってこそ、南北間に信頼が形成されて関係を改善することができる。それは米朝・日朝関係正常化にも通用する原則というのが朴の持論だ。
最近の北朝鮮情勢は不安定だ。金正日の健康悪化説は確証に至っておらず、昨年11月末に断行された貨幤改革以後、深刻なインフレと物資不足で社会不安は深まっている。ポスト金正日体制がソフトランディングできるかも不透明だ。体制崩壊にともなう急変事態で一気に統一になるという分析もある。朴は警告する。
「金委員長は首領体制に対する安全措置を用意していると情報筋から聞いた。中国とロシアも北韓の崩壊を望んでいません。急崩壊すれば韓民族にとって想像さえしたくない災いが起きうると思います。収拾不能な状況に陥ることもありうるのです。物理的衝突より恐ろしいのです」
朴が40年かけて南北問題の研究に邁進してきた理由は、統一という民族の夢をかなえるための一助になることが、自分に課せられた命題だと考えているからだ。しかし現実的に、障害は少なくない。統一を望む韓国人は昔ほど多くはなく、莫大な費用と副作用を憂慮する声もある。統一は“白昼夢"で終わるかもしれない。
それでも朴は、必ず統一できると信じている。いつになるか分からないが、統一に向けて準備することの重要性を訴える。朴は東西ドイツの統一を例に挙げた。
「70年の第1次首脳会談以来、西ドイツは東ドイツに毎年20億ドルずつ支援しました。これが統一の土台になりました。東西ドイツ統一時の国民所得格差は3万ドル対1万ドルでした。統一ドイツはベルリンの壁崩壊以降、旧東ドイツ地域発展のために20年間年平均150兆ウォン以上を投資しました。統一を繰り上げるにはお金が必須です」
朴が批判を受けながらも対北支援にこだわった理由はそこにあった。南北の所得格差は2万ドル対500ドル。40対1になる。朴は所得格差が5対1になれば統一は近づくと予測している。「和解・協力が活性化するよう、その時までは南北が忍耐心を持って力を合わせなければなりません」と朴は力説する。
「平和的統一という目標こそ決して放棄してはならない価値です」と朴は考えている。
(おわり、敬称略)
※ この連載は朴氏の北朝鮮・統一研究をテーマに扱います。本紙の主張と一致しない記述もあります。 |