ログイン 新規登録
最終更新日: 2017-03-29 19:50:49
Untitled Document
ホーム > アーカイブ > 小説
2010年02月08日 10:01
文字サイズ 記事をメールする 印刷 ニューススクラップ
 
 
序曲(57)金鶴泳

「あらあら、ウイスキーの空き瓶が、相変わらずこんなにたくさん」
 窓辺の床の上に、ウイスキーの空き瓶が十数本並んでいた。
 湯島の下宿にいたときも、洋子は二、三度祥一の部屋を訪れたことがあった。そのときも、部屋の隅の畳の上にウイスキーの空き瓶が並んでいた。
「お酒を飲むのも、ストレス解消にいいかも知れないけれど、飲みすぎないようにしてね」
 とそのとき洋子はいった。
「外食は栄養が偏りがちだから、できるだけいろいろな種類のものを食べるようにしてね。お酒を飲む人は、肝臓を保護するために、特に蛋白質が必要なのよ。それから、新鮮な生野菜をたっぷり食べて、ビタミンCを十分にとること」
 などと、栄養士みたいなことをいったりもした。
「だから、栄養のバランスをとるために、君のところに行っているじゃないか」
 祥一は冗談混じりに応えたものだった。


 洋子は、化粧の仕方が上手であるように、料理も上手だった。訪れるたびに、スキヤキなど、何らかの肉料理をご馳走してくれる。韓国料理も作ってくれる。これがリバーの肉料理に劣らず旨かった。
 レタスなど、生野菜もたっぷりある。季節毎の果物も用意されている。自分は酒も煙草もまったくだめなのに、彼のためにビール、それに煙草も灰皿も用意されている。何から何まで気のつく女で、そのたびに、彼は、自分に注がれている洋子の愛情の深さを感じずにいられない。
「一週間にいちどぐらいではだめよ。毎日のように食べなくては」
 ともそのとき洋子はいった。週に、二度でも三度でも、わたしのところにいらっしゃい、という意味にもきこえた。
 彼は、黙っていた。
 二度でも、三度でも、行こうと思えば行けた。いや、行きたい気持になることはよくあった。さらにいえば、保谷のアパートで同棲しようと思えば、洋子はそれも拒まないだろう。大学から遠くなるにせよ、一緒に住んでいる方が、掃除、洗濯等の手間も省けて、彼には便利である。それに、二人で住んでいる方が、寂しさも紛れる。洋子はむしろ、一緒に住むのを望んでいるかも知れない。
 しかし、そうしたい気持を制するものが祥一の中で働く。洋予に対する自分の気持がはっきりしていないせいだが、それは、自分の道がはっきりしていないところがらくる。結婚も可能だとは思えない。
 はっきりしないまま、ずるずると洋子と親密の度を増して行ったら、彼女を不幸にするだけのような気がする。本当をいえば、道ができてから歩いて行くのではなく、歩きながら道を作って行くものであろう。不幸になるか、幸福になるかも、二人の努力次第であろう。彼は、自分を優柔不断な人間だと思った。
 優柔不断な気持のまま洋子との関係を続け、友達とも恋人ともつかないつき合いが続いている。いや、実質的にはすでに恋人も同然の関係になっているわけだが、恋人という意識を排除しようという気持さえ祥一にはある。洋子に夢中になれないというより、夢中になってはいけないという気持がある。
 その前に、しなければならないことがあるように気がしている。では、しなければならないことは何なのか。強いていえば、生き方を見定めるといったたぐいのことだが、これもまた、本当をいえば、生きながら考えるべきものであろう。

1984年9月7日4面

1984-09-07 4面
뉴스스크랩하기
小説セクション一覧へ
ソウルで太極旗集会の現場から…
「日本人漁民50人以上を殺した」
太極旗革命をもって大韓民国の未来を
親族虐殺者の部下を認めた朝総連
朴大統領 弾劾決定
ブログ記事
ブログの読者各位 『新・浦安残日録』(号外)
新・浦安残日録(3) 晩節の〝選択〟
”若い世代が統一のための体力を作る”、韓国若者たちの誓い
国会内に大韓民国の敵がいると一喝する金鎮台議員
禹鍾昌記者が憲法裁判官8人を相手に損害賠償訴訟を提起
この一冊
『婦人会画報 絆』第1巻第4号
『婦人会画報 絆』第1巻第3号
『在日本大韓民国婦人会画報』第2号
菜食主義者
中国朝鮮族を生きる 旧満州の記憶
自由統一
北の人権状況告発
韓米演習に合わせて挑発
北韓をテロ支援国再指定へ
「日本人漁民50人以上殺した」
「北の脅威を抑制」


Copyright ⓒ OneKorea Daily News All rights reserved ONEKOREANEWS.net
会社概要 会社沿革 会員規約 お問合せ お知らせ

当社は特定宗教団体とは一切関係ありません