年明け早々、中朝国境地帯に位置する遼寧省丹東市に、韓日米の記者が集まった。彼らの視線は、平壌発の列車が通る丹東駅と鴨緑江にかかる鉄橋に向けられていた。金正日の訪中説が流れたからだ。しかし金正日は、うわさが広まってから20日以上経った今でも訪中せずにいる。金正日訪中説は、なぜ今ささやかれているのか。
最大の理由は切迫した北朝鮮の内部事情だ。
昨年11月末に断行したデノミ以降、北経済は破綻直前に追いつめられているという情報がしきりに飛び交っている。
計画経済が成功するか否かは食糧と物資の供給にかかっているが、北朝鮮では闇市にさえモノがないほど供給能力は失われている。
| 中国・丹東にある「抗美援朝記念館」。中国は米国と戦って北朝鮮を助けた「抗美援朝」を、「平和のための決断」としている | 状況を打開するには外部からの援助か借款を受けるしかなく、援助国の最有力候補は中国だ。
中国の思惑も合致する。6カ国協議の議長国である中国は、いまだに表面的には協議への復帰を拒んでいる北朝鮮を復帰させることができれば面目を保てる。
金正日が後継作業を円滑に進めるため、中国の支持と支援を引き出す思惑があるという分析も出ている。
過去の訪中歴を見ても、時期的にもこのタイミングが有力だ。
2000年以降、金正日は4回訪中したが、そのうち2回は年初に行われた。
2、3月には中国最大の祝日「春節」(2月14日)と金正日の誕生日(2月16日)、中国最大の政治行事である全国人民代表大会と全国人民政治協商会議(3月中)という重要行事が控えている。4月になってからでは、北の経済難と6カ国協議への復帰を整理するには遅いという判断も働くだろう。
金正日訪中は、常に電撃的に行われてきた。秘密主義の中国政府もテロを恐れる金正日サイドも、事前に日程を明かすことを控えるためだ。
しかし今回は、訪中説がいまだ根強く残っており、マスコミも注目している。その中での訪中強行となれば、北朝鮮内の事情が深刻化していることの傍証になる。
一方、北朝鮮経済はそれほど深刻ではなく、金正日訪中説は「稚拙な観測」という主張もある。自分の親衛隊の動向と権力維持にしか関心のない金正日にとって、人民の生活は副次的なものでしかないというのだ。
いずれにせよ金正日は“最後の望み"である中国との関係を強化させたい考えだろう。
朝鮮戦争開戦60年を迎える今年、中国の参戦に感謝を示すという形で、丹東にある抗米援朝記念館を訪問することも否定できない。年初の訪中がなかった場合、中国が朝鮮戦争に介入した10月に延期される可能性が有力と見ていい。
(ソウル=李民晧) |