ハイスピードな韓国の高齢化社会
G8先進国の高齢化問題は深刻だ。国連の定義によると、65歳以上の人口比率が7%以上の国は「高齢化社会」、14%以上は「高齢社会」、20%以上の場合、「超高齢化社会」と規定している。ドイツは2012年、英国、フランス、米国が2020年には超高齢化社会を迎える。
日本は既に超高齢社会に入っており、今年の9月15日時点で日本の高齢者人口(65歳以上)は2898万人と、総人口の22・7%を占める。世界で一番早く超高齢化社会(2006年)に入ったと言われている。高齢者が働いていない世帯は支出の不足分は、預貯金の取り崩しなどで賄われている。老齢人口の増加と労働人口の縮小が財政負担を重くさせ、若年層の税負担を高め、経済拡大を停滞させている。日本はバブル崩壊以降約20年間GDP(国内総生産)を拡大できずにいる。
韓国の高齢化もかなり進んでいる。韓国も2000年に7%を超えて高齢化社会に入っており、2018年には14・8%に達し高齢社会に入ると言われている。同年には韓国の人口はピークの4934万人に達し、その後は日本以上の少子化により人口は減少する。
2026年にはベビーブーム世代は65歳以上の人口が20%を超えると予測され、「超高齢化社会」に入る期間は8年と、日本の11年、米国の19年より短く、準備期間がほとんどないのが実情だ。
各国ベビーブーマーの経済的影響
各国のベビーブーマーはあらゆる点で社会的、経済的影響を与えてきた。日本のベビーブーマーのピークは第2次世界大戦が終了した直後の1947年から49年(団塊の世代)、韓国は韓国動乱の終了した後の1955年から63年までだ。中国は1960年代から70年代である。
彼らが成人し社会に出た頃、各国は豊富な労働力の提供と高貯蓄により高度成長を果たしてきた。また、30代に入った結婚適齢期を迎えた時、不動産価格は上昇している。日本は1980年代後半、韓国は1990年代後半、中国は1998年以降、現在まで上昇している。
日本のバブル崩壊や米国のサブプライムによる不動産価格の急落についても、金融経済の崩壊が主因であるが、背景にはこのような人口構造による経済的変化。すなわち日本の団塊の世代や米国のベビーブーマー(人口比約30%、1946年から64年間生まれ)の引退、失業などによる消費の縮小がその背景にあるとする見方がある。
日本では2007年問題として「団塊の世代」のトップランナー1947年生まれが60歳定年を迎えた2007年から2009年にかけ、280万人以上が定年退職期を迎えた。こうした大量退職により、企業には労働力不足や退職金の支払い増加といった問題を「2007年問題」として日本は雇用延長に取り組んだ。2004年4月に「改正高年齢者雇用安定法」を制定し、定年の廃止または65歳への引き上げ、継続雇用制度導入のいずれかの実施が義務づけられた。
韓国団塊世代の退職と特殊性
韓国の場合、現代経済研究院の推定によれば、2010年から2018年までにベビーブーム世代(712万人)のうち311万人の賃金勤労者が引退するという。ベビーブーマーの多くは、引退期が近づいているにもかかわらず、何も備えができていないのが実態だ。巨額の住宅ローンと子供たちの教育費の負担を抱え、金融資産を蓄えることができなかった。個人の資産運用は7割が不動産で、教育費も他の先進国に比べて7―8倍の家計負担があり、金融資産も少ない。大量引退による内需の縮小を防ぐうえでも、定年延長もしくは高齢者の雇用の拡大策が必要だろう。
ただ気になるのは、ベビーブーマーの引退と不動産バブル崩壊が重なるとする分析だ。1991年日本、1995年香港の不動産バブルの崩壊は土地の時価総額が国内総生産(GDP)の4倍に達したときに弾けた。韓国は2005年、すでに8倍に達している。いびつな不動産価格は経済の縮小や高齢化による消費の委縮等から是正を求められるかも知れない。G8諸国は既に高齢化社会に入っておりGDPの拡大は期待できず、G8諸国だけでは問題が解決できなくなった。世界経済の発展と問題解決には、人口構成が若く、高成長と貯蓄率の高いG20諸国を仲間に入れざるをえないであろう。
(金融コラムニスト 河 東 秀) |