北韓では約870万人の住民が深刻な食糧不足に直面しており、国際援助が届いているのはそのうち200万人にすぎない。国連人権理事会は人権状況特別報告者であるウィティット・ムンターボン・チュラロンコン大教授(タイ)がまとめた「北韓の人権状況に関する年次報告書」を国連総会に提出、これを潘基文事務総長が4日公表した。
同報告書は2004年から毎年作成され、今回の報告書は昨年後半から今年前半までの人権状況を分析、報告している。同報告は食糧不足について国際的な支援を求める一方、北韓が今年に入って米国や非政府組織(NGO)からの食糧支援を拒む姿勢を強めていることを問題視した。また「ミサイル発射や核実験が、国際社会からの援助不足を招いたことは疑いの余地がない」と批判した。
人権侵害事案として、10カ国以上が被害に遭っている拉致問題については、北韓に対して「問題解決のため、効果的に協力すべきだ」と勧告した。そのなかで日本に比べ、韓国で多数の被害者(拉北者)が出ていることが長期間顧みられなかったと強調、暗に韓国政府の取り組みの弱さを批判している。
さらに北住民の人権状況は「全体的に悪化」して、さまざまな人権侵害が横行していると指摘、特に国連安全保障理事会に対して北住民保護のための措置を講ずるよう求めた。
ムンターボン特別報告者は、今回の報告書の原案にあたる報告をすでに3月中旬、任命機関である人権理事会に対して行っており、深刻な食糧不足に苦しむ870万人の住民のうち、今年に入って食糧支援が受けられたのは180万人にすぎないと指摘していた。そのおりには人権理事会北韓代表が答弁権を行使して「ねつ造だらけの報告書を拒否する」と発言していた。
北韓は3月、米国民間団体からの食糧支援を突然拒否して関係者の国外撤収を求め、国連世界食糧計画(WFP)からの支援のみ受け入れてきた。しかし4月以降のテポドン2の発射や核実験強行でWFPに対する各国からの援助が急減。北韓は今年も100万トン前後の食糧不足が推定されている。韓国政府は国際機関や民間団体を通じた人道的支援のみを認め、李明博政権発足後、当局間の食糧支援を中止している。 |