霊山大学国際学部教授 崔永鎬
8月30日に行われた日本の衆院選の結果、民主党が308議席を獲得し、単独過半数を大きく超える大勝利をおさめた。一方、自民党は119議席にとどまり、創党以来最悪の惨敗となった。一野党が一挙に単独過半数を獲得して政権交代を実現したのは、戦後日本の政治史上初の事件だった。
政権交代により、今まで官僚主導の行政と自民党の内部政策調整によって比較的安定して運営されてきた国家的規模の政治システムに、柔軟性と不安定性が生まれることを意味する。日本政治の根本的性格の変化を予告する信号と言える。
外交政策において民主党は、自民党との差別化を計るため、米国に対する対等な外交関係とアジア国家との協力関係推進を打ち出した。米国の対アフガニスタン戦略を批判し、米軍第7艦隊だけで日本の防衛を担当するに十分だという理由で、実戦部隊まで日本に配置する必要がないという主張をした。
しかし、実際に政権を取った民主党が、今後米国からどれほど防衛政策の自律性を確保できるかは未知数だ。防衛政策で日本が独自性を確保しようとする努力は、自民党政権でも行われてきた。過度の変化はむしろ周辺国を刺激する可能性も高いので、民主党は慎重かつ漸進的な変化をとると思われる。
民主党の従来の政策路線に沿うならば、韓国と中国に対する外交政策はより融和的に展開されると見ていい。
民主党の鳩山由紀夫代表らは、靖国神社からA級戦犯の分祀、あるいは別の追悼施設の設置を提案してきた。
独島領有権問題については、日本固有の領土と主張しながらも慎重な管理が必要だという立場を取っている。北朝鮮に対しても拉致問題未解決を理由にかたくなに対話を拒んでいた自民党政権に疑問を提起してきた。
民主党政権が今後、一部の国民の反発を受けながら、どれほど新しいアジア外交を展開していくのか注目される。
韓国と中国は、民主党政権に大きな期待を寄せている。
李明博大統領は、鳩山代表に外国の首脳として初めて電話をかけた。李大統領は、韓国国民が今回の選挙で鳩山代表に多くの期待をかけていることを伝え、韓日が未来に向かって協力していくきっかけになるように願うと述べた。鳩山代表は必ず発展的韓日関係を築けると思うと返した。民主党こそ歴史を正しく見つめられる政党という点を強調しながら「友愛の精神を持って、より緊密に協力していこう」と提案したという。
中国政府も総選挙の結果について論評しつつ、両国関係の発展を期待するという好意的な立場を表明した。
中国外務省の姜瑜報道官は会見で、日本の選挙結果を注意深く見守ったと述べ、「隣国でありアジアの主要国家である中国と日本は、高位級交流の友好的な雰囲気を維持し、アジアの平和と発展をともに促進しなければならない」と期待を表明した。
ただし、民主党の勝利がすなわち韓日関係の劇的変化を生むと考えるのは適切ではない。民主党は、自民党に比べて原則的に領土問題や歴史問題に対して慎重で周辺国の立場に理解を示す傾向が強いが、民主党内部には多様な意見を持った構成員が存在しているからだ。自民党議員よりも保守的な意見を持った政治家もいる。
また、今回の総選挙で得た支持を維持するには、民主党政権が経済再建と雇用安定を進めなければならない。これは容易な作業ではない。
ややもすると経済政策で可視的な効果がなければ、今回自民党に向けられた“怒りの矢"が自分たちに向けられることも考えられる。民主党は、世論の行方に絶えず気を配らなければならないという困難を抱えている。
期待が大きければ失望も大きいという理は、日本国民のみならず周辺国の国民にも通じる。問題の火種をはらみながらも自民党政権が愼重に「管理」してきた韓日関係が、むしろ期待を集めた民主党によって悪化する可能性も否定できない。
チェ・ヨンホ=東京大学国際関係論 博士課程修了。立命館大学コリア研究センター特別研究員。 |