金順徳コラム(東亜日報)
先週の金曜日、「親朴連帯」に奇怪なことが起きた。全芝命「親パク連帯」代弁人が、朝のラジオ放送に出演して、ハンナラ党の朴槿恵元代表(以下、朴槿恵)を批判したかのような話をした後、半日も経たず、事実上更迭されたのだ。原則を強調してきた朴槿恵(パク・クンへ)が、少し変わったようだという進行者の言葉に、「原則に反する判断をする方ではないが…誰かそばで判断を曇らせた人がいたのではないか思う」と発言したという理由だ。
「睨まれると死ぬ」という朴槿恵へのパニックが澎湃
メディア法と関連した朴槿恵の態度に対しては、見る人によって意見が異なり得る。それより私の関心を引いたのは、朴槿恵に対して言葉を一度しくじったと公党のスポークスマンの首が飛んだその熱血衷情の集団心理だった。アッラーに不敬だと一刀のもとに斬り倒す宗教的原理主義が思い浮かんだほどだ。「親朴連帯」のホームページの掲示板には、「親朴は…すべての国民が平安に暮らせるようにする宗教だ」という文もある。
「反朴」も朴槿恵に首を握られている状況は同じだ。山場ごとに彼女の一言は政局の流れを変え、彼女が手を貸してくれないと選挙で負けた。今は如何なる法案や人事も、朴槿恵の裁可なしでは難しい状況だ。派閥の首長でなく、大統領を凌駕する「半人半神」の境地だ。当然、彼女は言葉が長くなく、玉音を聞かせてくれない時が多い。「側近」が代わりに説明するか、発言を伝えるのが常だ。解釈が誤ったとして、他の側近が出たりもする。神か特定の人を媒介者として、意を果たす「神託統治」がこういうものかと思われる。
「信念のある原則主義者」の朴槿恵の原則が、神の意志のように絶対真理なのか、でなければ金バッチ(国会議員バッチ)に首を賭けた政治屋や、救世主を待ちこがれる一部の国民が作った神話なのかは確かめて見る必要がある。
李明博大統領が、2007年大統領当選後、「朴槿恵を国政のパートナーにする」と言った約束を守らなかったこと、朴槿恵が「私も騙され、国民も騙された」と言った、2008年の総選挙の公認は、彼女としては赦し難しいだろうが、過去に拘ると前へ進めない。迫害される王女のイメージで、「親朴」の候補たちを大挙当選させ、自らは不動の大統領適任者の地位を固めているから、損ばかりしたわけではないという分析も可能だ。呪われたように、ハンナラ党は今春の再選挙まで惨敗した。
支離滅裂のハンナラ党や、歯痒い青瓦台を見るに見かねて、世論が大統領に朴槿恵を引き込めと要求して久しい。与党の主流が、遅れて苦しく取り出した「和合策」が、親朴系の座長といわれる金武星を院内代表にするカードだった。だが、朴槿恵は冷静に断った。「党憲や党規に違反して、そういう形で院内代表を決めるのは反対だ」と。
原則ばかりを固執する独善が怖い
党憲と党規はもちろん重要だ。だが、今は神の意志を犯すと地獄へ落ちるという中世でない。現代社会においては、民意や世の中の変化によって、憲法も変えられる。その時、朴槿恵がいつも強調してきた「国民の意思に従い」和合する姿を見せたら、その後も「神託」でなく、一緒に参加してくれたら、そしてハンナラ党が執権党らしく生まれ変ったら、国の状況は今日のように手詰まらずではないかも知れない。朴槿恵の原則が、国益より重要なのか疑問が湧くのもこのためだ。
彼女はエリザベス1世英国女王を最も尊敬するといった。寃罪をこうむりロンドン塔に閉じ込められた悲運の王女、「私は祖国と結婚した」と言った処女女王の宿命のみを自らと同一視はしていないだろう。1559年即位の時には宗教葛藤と外勢の干渉に揉まれた島国を、女王は1604年に亡くなる時まで奇蹟のように発展させて大英帝国の基礎を築いた。そういうリーダーシップを手本にしたいと、朴槿恵は数えきれない程誓っただろうと思われる。
だが、エリザベス1世が実用と妥協、適応に優れた柔軟なリーダーだったという事実も知っているのか気になる。女王は新教徒だったが、国教会を復活させ、先王のメリーの葬式をカトリック儀式で行なうのを許して、国分裂を防いだ。学識も深く有能だったが、臣下らに「私の意志ばかり尊重せず、あなた方が思う最善を忠言しなさい」と言った。現在の大統領を凌駕する君主だったにも、原則ばかりを固執する狷介ではなかったということだ。
自分のミニホームページに休暇の挨拶を載せた槿恵様、今、神殿の中で幸せかも知れないが、われわれは穏やかでない。我々に幾つもない政治的資産かつ希望である彼女が、万一、この政府が失敗してこそ、次期大統領になれると思ったら、国民と歴史に罪を犯すことであることを分からねばならない。守旧左派に政権が渡され、自分が熱心に勉強した大統領学を使う機会が消えることもあり得る。国民が完全に背を向ける前に、一言に国を動かせる独歩的政治力で、「ハンナラ党」でも「親朴連帯」でも党代表になって、国政の一つの軸の責任を取って欲しい。平壌まで訪ねて、お母さんを死なせた金正日とも握手したのに、国のため、また自身のため、やれないことが何があるのか。
金順徳論説委員yuri@donga.com
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