宮崎県美郷町―。かつて韓半島から渡来した百済の王族が逃れ着いたという「百済王伝説」が息づくこの地は、古くから東アジアの交流と絆を象徴する聖地である。その伝説を現代の感性で編み直そうと始まった「西の正倉院 みさと文学賞」の記念すべき第1回作品集を手に取り、深い感銘を覚えた。
本書に収められた作品群は、単なる郷土史の枠に留まらず、百済の王族が抱いたであろう郷愁や、彼らを受け入れた美郷の人々の慈しみを見事に描き出している。今日まで、この文学賞が一時的な試みで終わることなく、現在まで6冊の作品集が刊行され続けている点は特筆すべきだ。
地方自治体が主導する文学賞が息づき、かつ質の高い作品を生み出し続けている事実は、美郷町が守り続けてきた歴史の「厚み」と、百済との縁を大切にする人々の「熱意」の証左にほかならない。韓日の精神文化をつなぐ新たなプラットフォームとなっている。
第1回作品集には、論文調で書かれた意欲作の原田須美雄著「神門」のほか、父と子の何気ない会話の中に美郷町と韓日文化交流の要素を盛り込んだ柴田瑶著「また、な」ほか7作品を収録。
kraken刊
定価=1300円(税別)
|