韓国と日本の関係は2023年3月の韓日首脳会談をきっかけに改善基調にあり、経済界においても未来志向の関係構築に向けた動きが活発化している。韓日の経済協力は、世界情勢の変化やグローバル経済の課題に直面するなかで、多くの共通課題への対応のため、新たな段階へと進んでいる。
韓国と日本のコンテンツ産業の協業が急速に進んでいる。韓国のウェブマンガを原作とした韓国ドラマが制作され、のちに日本版がリメイクされるなど、さまざまな作品が登場している。現在制作中のほか制作発表段階も含めれば、今後も次々と韓日共同制作コンテンツが登場する予定だ。2030年以降には、数千億~1兆円の売り上げになるとの試算もあり、新たな基幹産業に成長するという期待が高まっている。
■日本市場向けに再構成
昨年6月からアマゾンプライムで配信されている『私の夫と結婚して』は、24年に韓国のケーブルテレビ局tvNで放送されてヒットした同タイトルドラマの日本版。韓国の制作スタッフと、小芝風花、佐藤健ら日本の俳優、クルーが参加した。単なる翻訳ではなく、日本市場向けに再構成された作品として制作された。
同作は同名の韓国のウェブ小説が原作となっている。まず韓国でドラマ化してヒットし、日本版リメイクののちにグローバル配信も視野に入れ、企画段階から一連の工程を計画していた。
韓国と日本のコンテンツビジネスに詳しいデジタルハリウッド大学の吉村毅教授は「リメイクの枠を超えた新しい多国籍の知的財産(IP)戦略の一例」としている。
他に韓国のケーブルテレビ局JTBCで18年に放送された『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』は、日本版『スカイキャッスル』として24年にテレビ朝日系で放送された。吉村教授は「日本版では設定や舞台を日本社会に置き換えて再構築し、放送・配信を見据えた次世代リメイクと言える」としている。
他にも『梨泰院クラス』は韓国のウェブトゥーン(縦読みマンガ)が原作でJTBCが20年にドラマ化し、ネットフリックスを通じて世界中で視聴されている。日本では、韓国の原作が日本版ウェブトゥーン『六本木クラス~信念を貫いた一発逆転物語~』としてローカライズ(現地化)された。さらに同作を基にして『六本木クラス』としてドラマ化し、22年にテレビ朝日系で放送された。また、『梨泰院クラス』はミュージカル化もされ、25年に東京、大阪などで上演された。
これらは韓日コンテンツ産業協業のごく一部の事例でしかない。ほかにもアニメーション、音楽、舞台などさまざまな協業が進んでいる。
■輸出の韓国と内需の日本
韓日それぞれのコンテンツ産業の特徴について吉村教授は「韓国はスピードと政策を武器に最初からグローバル展開を視野に入れる輸出国家。日本は豊富な原作IPと高いファン単価を持つ内需国家」とみている。
韓国は伝統的に短期集中型の全16話といった形式で企画から制作、配信までが速い。また政府としてコンテンツ産業を輸出産業と位置付け、韓国コンテンツ振興院による企業への資金援助、クリエーター養成を一気通貫で行っている。
■ライブでは日本のノウハウ
ドラマ以外のコンテンツでも協業は進んでいる。日本の音楽市場で存在感を示すKPOPだが吉村教授は「KPOPライブでの、ステージや裏方は日本のクリエーターがかなり関わっている。韓国音楽の世界への発信力と日本のライブ演出、舞台制作のノウハウがかみ合っている」と評している。今後の展望として「日本の2次元舞台(マンガ、アニメ、ゲームを原作とする舞台公演)の演出家がKPOPのワールドツアー演出を担うほか、KPOPのライブ演出ノウハウと日本のアニメ、ゲームの2・5次元舞台のノウハウが融合するといったことが十分考えられる」としている。
日本はマンガ、アニメ、ゲーム、ライトノベルなど、数十年にわたって蓄積されたIPがある。またアニメやゲームのコアなファンは、イベントやライブへの参加、フィギュアやグッズの収集、ゆかりの地を訪ねるといったことに消費をする。経済産業省などの調査でも、日本のコンテンツ市場は世界3位の規模でありながら、1人あたりの支出額でみると世界トップレベルにあるとされる。
今後の韓日コンテンツ産業について吉村教授は「グローバルへの発信起点として、最重要な組み合わせのひとつになる」と予測している。
韓国と日本の共同制作ドラマは単発ではなく、日本のテレビ局と韓国のスタジオが提携するという形で毎年1~2本、共同企画制作する方向にシフトしている。このことによって人間関係とノウハウが蓄積され、スピードと完成度が増していく。また韓国、日本での放送と、グローバル配信を前提に企画制作することで、アジア全体への波及が期待できる。
■10年間で3倍に伸張
吉村教授は30年の韓日協業関連コンテンツ売上高を数千億~1兆円と試算している。
経済産業省の25年のまとめによると、コンテンツ産業の世界市場規模は135兆円であり、石油化学産業、半導体産業より大きい。日本発コンテンツ産業の海外売上高は5・8兆円で、鉄鋼産業、半導体産業の輸出額を超える規模であり、自動車産業に次ぐ基幹産業として位置づけている。日本のコンテンツ産業の海外売上高は、他産業の海外輸出額と比較して、10年間で約3倍と大きく伸長している。同省では、コンテンツ産業の33年海外売上高目標を20兆円としている。
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