人権週間と重なる12月初旬、都内の会場で韓半島の深刻な課題を扱う2つの映画上映会が開かれた。約9万3000人の在日同胞・日本人妻らその家族を死地に送った「北送事業」と、進行形で議論の進む韓国「不正選挙」の問題。映画を切り口に糾弾した。
都内で約260人が視聴
「北朝鮮に自由を! 人権映画祭」実行委員会(佐伯浩明委員長)は5・6日の2日間にわたり、新宿区のJICA地球ひろばで第7回となる同映画祭を開催、会場に約200人が訪れた。
初日の5日は北送事業をテーマにした4作品『北朝鮮帰国事業とは何だったのか?』(2025年)『海を渡る友情』(1960年)『人質93340』(2025年)『リターン・トゥ・パラダイス』(25年)を上映。6日は北韓の人権問題をテーマにした3作品、『死んでも韓流』(23年)『臨時教員』(25年)『あなたの知らない拉致問題』(25年、短編)と、北韓で制作されながら公開を見なかった『偉大なる先軍将軍のお母様』(11年、一部)を上映、ジャーナリストの五味洋治さんの講演も行われた。2日間で上映された作品のうち5作品が今年の制作、韓国映画を中心にした新作で、日本初公開となる作品が多かった。
開会行事であいさつした佐伯代表は、「日本人妻を含んだ約9万3000人の在日コリアンが北に送られた。政治犯収容所などの人権蹂躙も深刻であり、日韓だけでなく世界が手を取り合ってこの問題に向かって欲しい」と述べた。
■北送と闘った人々が登壇
はじめに上映された『北朝鮮帰国事業とは何だったのか?』の後のトークでは、1970年代に北送事業と闘った池田文子・日本人妻自由往来運動実現の会会長が登壇し、映像を記録した人たちとの当時の苦労話などを語った。小川晴久・NO FENCE代表は、「池田さんが当時、朝鮮総連などと闘った記録がこうして今日に映像記録として甦ったことに対し、大きな意義を感じている。日本当局の関与を糾弾している点も重要」とした。
5日、『北朝鮮帰国事業とは何だったのか?』上映会の一幕。映画を通じ、約9万3000人の在日同胞とその家族を死地に送った北送事業の犯罪性を糾弾
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「不正選挙」上映委員会は8日、北区の北とぴあで『不正選挙~神の作品か〈監督版〉』(李永敦監督、25年)の上映会を開催、会場に約60人が詰めかけた。
同作は、韓国で20年と24年に行われた総選挙と、22年と25年に行われた大統領選挙の結果が統計学的に考えられない数値であった点などを各界の専門家らに取材したドキュメンタリー映画。原版の公開は今年5月21日で、「第21代大統領選挙」(6月3日)より先行して韓国で公開。選挙結果を反映し後日談も収録した〈監督版〉は、9月4日に再上映された。
■韓国不正選挙に中国の影
同作の核心は、20年以降の韓国の4度の選挙で不正選挙が行われた際、選挙に使用された投票用紙・集計機械・インターネット接続などの様々な点から、中国の介入があったことを指摘している点など。
上映会後に李監督は本紙の取材に対し、「映画を作った監督として、感動的な場面と出会うことができた。米国より先に日本の上映機会に立ち会えたのも印象的。韓国の”選挙詐欺”に対し説明した時も、聴衆の理解度が高かったように感じた。映画を視聴してくれた在日同胞と日本の皆さんに感謝している」と謝意を述べた。
また、「韓国の選挙詐欺の問題は事実、韓国だけの問題ではなく、中国と関係を持つどの国であっても発生する可能性がある」とし、「韓国の選挙を巡る不正・詐欺は、米国や日本など、様々な国で関心が持たれなければならない問題になるだろう」と提言した。
なお、韓国内で制作された不正選挙をテーマにした映画などの映像・動画コンテンツは、同作に限らず良質な作品が多くあるという。上映会に参加した情報筋は、「不正選挙を糾弾したファースト・ペンギンとすべき、閔庚旭を本作が紹介している点が重要」と語った。
8日、上映会に参加した李永敦監督は、韓国不正選挙への中国の介入を問題提起
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