韓国政府は2027年までに運転者が不要となる「レベル4」の自動運転車の商用化を目指し、実証のための環境を整備する。運転自動化レベルで先行する米国、中国を追い上げるため、大規模な実証基盤の構築や規制の緩和を加速させる。
国土交通部は11月26日、経済関係閣僚会議で「自動運転車産業の競争力強化策」を発表した。8月に公表された「2027年自動運転レベル4本格商用化」目標の後継措置となる。非常時のみ運転者が必要な水準である「レベル3」の運転レベルを引き上げる。
現在国内47カ所の試験運行地区で自動運転シャトルバスなどが運行されているが、制限的な路線・区間が中心であるため実証範囲が狭いとされてきた。このため来年までに都市全体を実証区域とする自動運転実証都市を整備し、自動運転車100台を運行させる。
一方、自動運転で先行する米国ロサンゼルスや中国・武漢では、すでに大規模な自動運転実証都市として、100台以上の自動運転車が常時運行し、ラッシュ時間、多重路線、複合環境で大量のデータを蓄積している。
結果として、世界の自動運転企業上位20社のうち、米国が14社、中国が4社あるが、韓国は1社のみとなっている。
自動運転実証都市整備とともに各種規制緩和にも取り組む。例えば、現在は収集した映像データの歩行者の顔、車両のナンバープレートなどにぼかし処理を施す必要がある。個人情報保護のための措置だが、歩行者の視線や動きを識別できるようになれば、より効果的な自動運転技術の開発が進む。映像データ原本を活用している米国・中国との技術格差の要因とされ、関係者は「認識精度で25%の差が出る」としている。
また交通弱者保護区域では、ドライバーの直接運転が義務付けられているが、速度制限などの安全計画を立てれば、自動運転ができるようにする計画も持ち上がっている。
ほかにも自動運転車専用グラフィック処理装置(GPU)を確保・支援し、AI学習センターを造成するなど、研究・開発支援を強化する。レベル4の自動運転車が交通事故を起こしたとき、法的責任の主体を明確にする法改正を進める一方で、自動運転タクシーによる既存のタクシー業界の影響を最小化するため、政府、自動運転業界、タクシー業界の協議体も設置する。
自動運転車技術は、運転者支援の「レベル1」、部分自動化の「レベル2」、条件付き自動化の「レベル3」、高度自動化の「レベル4」、完全自動化の「レベル5」となっている。現在の韓国はレベル3水準と評価されている。米国と中国はレベル4の水準に近付いていると分析されている。日本は一部の高速道路区間でレベル3車両が導入されているが、レベル4の商用化は実証段階にとどまっている。 |