14日、ジャーナリストの黄意元・メディアウォッチ前代表が京畿道高陽市の野山で自ら命を絶った事件は、韓国社会の「正義」と「法治」がどれほど危険な状況に置かれているかを赤裸々に告発している。「義士」は武力で抵抗し、「烈士」は裸で抵抗し殉国して正義を貫徹した人のことである。黄意元氏は銃刀より強いペンを武器として抗去した義士であり、自決という死で正義を実現した烈士である。
◇自決が明らかにした「捏造」
黄意元烈士の遺書は、「『崔順実タブレットPC』に触発された朴槿恵・元大統領弾劾事件がJTBC放送社と検察・特検などが共謀した明白な操作事件」と強調している。真実を告発してきたメディアウォッチとその関係者たちがむしろ名誉毀損という濡れ衣を着せられ、刑事裁判を受けてきた実態を伝え、「真実・自由・人権・法治が失墜した事態」と糾弾した。彼の自決がメディアウォッチの潔白と無罪を喚起させ、真実を明らかにする一助になればと祈念している。享年、48歳。彼の死は単純な個人の悲劇を越え、偏向的司法システムと不義な国家権力に対し死で報いた壮烈な抗拒として記録・記憶されるだろう。
黄意元烈士は「崔順実タブレットPC」事件のため7年以上闘争してきた。朴槿恵元大統領弾劾の核心証拠とされてき該当タブレットPCについて、メディアウォッチ側は崔ソウォン(改名前の崔順実)氏のものではなく、JTBCの報道が操作してきたものと一貫して主張してきた。彼らはタブレットPCの実際の所有者が朴槿恵政府、青瓦台の行政官として勤めたキム・ハンス氏であるという主張を曲げなかった。甚だしくは、崔氏が自分のデスクトップPCを利用して該当タブレットPCにメールを送った22件の証拠を捜し出し、検察がこの事実を隠ぺいしてきたという実状も糾明した。彼らの主張は単なる疑惑・提起を超えた、緻密な真実究明に向けた努力だった。
黄烈士の死を触発させた直接的な原因は、裁判所による納得できない「偏向裁判」だった。
◇裁判所が生んだ悲劇
ソウル中央地方裁判所の嚴撤部長判事(研修院32期)が事件を引き受けた後、裁判の核心と言える「崔順実タブレットPC」への鑑定要請は受け入れられなかった。
さらに衝撃的なのは、嚴部長判事は何の理由もなく、先任裁判所が決めた証人採択(タブレットPCの所有主と名指しされた金ハンス前青瓦台行政官)と証拠鑑定などの事案を全て取り消し、でたらめ判決を強行しようとした事実だ。イ・ドンファン弁護士が「判事たちは『タブレットPC』の話が出ると手を振るが、それならば私たちが裁判を受ける理由がない」と公開して辞任届を提出したことは、裁判所がすでに真実糾明意志を喪失したことの証左である。
◇真実のための孤独な犠牲
黄意元烈士の自決は、正当防衛と真実究明の努力がすべて封鎖された状況の中、不法と不正に対抗する最後の抵抗手段として「宣告自体を受けない」という断固たる決心の表れだった。その闘争が、韓日関係修復にも貢献した。特に「日本軍慰安婦」論議でイ・ヨンス氏の証言翻弄を分析し「偽慰安婦」と指摘、正義記憶連帯を「従北団体」と規定するなど、正義・真実に向けた孤独に歩んで来た。正義記憶連帯を相手にした民事訴訟で1審と最高裁でどちらも最終的に勝訴したことは、黄意元氏の主張が単純な疑惑提起ではないことを立証する。
彼の勇気と信念は日本研究賞特別賞受賞につながり、当時の菅義偉首相から「信念によって正当なメッセージを発信することがいかに大切なことか見せてくれた」との親書を投じさせた。
黄意元烈士は遺書で、捏造報道と捏造捜査を主導したJTBC放送局と検察・特検、裁判所など隠ぺいに加担したすべての権力者に対し、「必ず天の大きな審判を受けることになるだろう」と念願を後世に託した。彼の死は、韓国社会の正義と法治がいかに病んでいるかを証明している。
彼の自決は、真実を無視したまま権力の裏に隠れ、一人の人間を死地に追い込んでも気にもとめない「鉄仮面」をかぶった者たちに永遠に消えない烙印を押した。黄意元烈士の自決は終わりではなく、ようやく始まろうとしている、正義のための最後の闘争の序幕である。
高永喆(コ・ヨンチョル)
拓殖大学客員教授、韓国統一振興院専任教授、元国防省分析官。著書に『金正恩が脱北する日』(扶桑社)など。 |