韓国政府は人工知能(AI)関連事業に約10兆ウォン(約1兆円)を投資し、経済ビジョンの中核に据える方針を明らかにした。積極的なAI投資・政策支援を通じて生産性を上げ、国民生活の質向上に活用する意志を示している。
李在明大統領は4日、来年度(1~12月)の政府予算案に関する施政方針演説を行い、「来年はAI時代を開き、新しい100年を準備する歴史的な出発点」としたうえで、予算の早期成立に向けての超党派の協力を呼び掛けた。
李大統領は「これからはAI活用に向けてデータを超高速で処理するためのインフラを構築しなければならない」とした。
来年度予算案728兆ウォン(約78兆円)のうち、AI関連予算として10兆1000億ウォン(約1兆円)を充てる。今年度の3兆3000億ウォンの3倍以上の規模で、世界トップ3のAI大国への飛躍のために、「フィジカルAI(ロボット、ドローン、自動運転車などと結合したAI)先進国達成のために集中投資する」と説明した。
さらに先端産業研究開発(R&D)投資、国防予算などの増額も発表された。国防については「通常兵器システムをAI時代に合わせて最先端兵器システムとして再編し、スマート強軍へと迅速に転換する」と強調した。
李大統領は「AI時代には1日遅れれば1世代遅れをとる」と迅速な対応の必要性を訴え、「産業化と情報化を成功させたように、AI時代の扉を大きく開く」と宣言した。
AI関連予算の急増は、韓国の国際競争力を後押しする可能性がある。企業や研究機関は先端技術開発に安定的資金を得られるため、研究や実用化の進展が加速するとみられる。物流、医療、国防など多分野での革新が進めば、経済全体の付加価値向上にもつながる。
また来年度政府予算案では、社会的弱者と脆弱層への保護予算も増額したことで、AI時代の格差拡大を一定程度抑える効果が期待できる。新技術導入に伴う雇用変化に対応する再教育や自立支援策の充実は、長期的な社会的安定に寄与する。
一方で、短期間での予算集中は既存産業や中小企業への資金圧迫リスクを伴う。特定分野に偏った投資は技術の均衡的発展を妨げ、将来的な産業構造の偏りを招く恐れもある。
またAIが機能するために必要な電力供給も重要な課題となっている。韓国政府は2030年までに26万枚のGPU(画像処理半導体)導入を目指しているが、原子力発電所の原子炉1基分に相当する1ギガワットの電力が必要であり、エネルギー政策の策定も急務となっている。
今後はAI投資が韓国国内経済、社会保障、国防力にどの程度の相乗効果をもたらすかが注目される。 |