政府は、ソウル市の全25区および首都圏の主要地域を「土地取引許可区域」に指定し、住宅ローン(住宅担保融資)の上限を2億ウォンに引き下げるという厳しい不動産対策を発表した。しかし、供給を増やさずに需要だけを抑える手法は「文在寅政権の再来」ともいえ、頓挫するのではないかとの見方が広がっている。さらに、居住・移転の自由を制限する反市場的措置だとする批判も上がっている。
李在明大統領は14日、不動産市場について「いずれは日本のようになる懸念が非常に大きい」と述べ、不動産を「時限爆弾」に例えた。1990年代初頭にバブル崩壊を迎えた日本の事例を挙げ、過熱する市場に強い警告メッセージを発した。これは「もう不動産で稼ぐ時代は終わった」との宣言とも受け取られており、政府は不動産に偏った資金を株式・資本市場へ誘導しようとしている、と見る向きもある。
本当に世界一高額か
大統領は「国民所得に対する不動産価格(PIR)を国際比較すれば、恐らく1位だろう」とも主張した。だが、統計庁やOECDなどのデータを総合すると、ソウルのPIRは10・5~13倍程度で、香港(20倍以上)、上海(16倍)、バンクーバー(14倍)には及ばない。
また、「日本式の崩壊」を警告する声についても、両国の市場構造には大きな違いがある。例えば、90年代初頭の東京におけるPIRは、約18倍とされている。より根本的な相違点は「ローンの仕組み」だ。日本では当時、銀行が住宅費用のほとんどを融資していたが、韓国では最大貸出割合(LTV)が40%程度と厳しく規制されてきた。今回の対策によって、さらに2億~4億ウォンの上限が設けられ、実需者でさえローンを通じた住宅取得が困難になる恐れがある。
一方、市場では、ソウルの住宅価格上昇の主因を「供給の不足」と「過剰な流動性」の二つが重なった構造的要因とする見方が優勢だ。
文政権の轍を踏む「供給なき需要抑制」の愚
李在明政権が発足から144日目にして3回目の大規模対策を打ち出したのは、既に実施された6・27(ローン規制)および9・7(公的供給)策が十分な効果を上げられていなかったことを示しているとの声もある。ソウルのマンション価格は8月から7週連続で上昇し、規制前の水準まで回復しているという。
市場では「文在寅政権シーズン2」と揶揄する声もあがり、28回にわたる規制を講じてもソウルの住宅価格高騰を抑えられなかった前政権と同様に、需要抑制にのみ依存する政策では価格上昇を防げないとの批判が高まっている。
特に、今回の「土地取引許可区域」の全面指定については、個人間取引を国の許可制とし、実居住義務を課すことが、憲法上保障された財産権(第23条)および居住・移転の自由(第14条)を侵害する可能性がある。
投機的需要を抑えるという趣旨は理解できるが、実需者の市場参入まで阻むのは過剰であり、事実上「ソウルのマンション取引禁止令だ」との批判を免れない。
【10・15住宅市場安定化対策の主な内容】
・ソウル市25区、および光明市・果川市など京畿道の12地域を「土地取引許可区域」に指定
・投機過熱地区・調整対象地域に続く「三重規制」を適用
・10月20日から、実居住目的の証明および自治体長の許可を義務化
・チョンセを伴う住宅購入、いわゆる「ギャップ投資」を全面禁止
・住宅担保ローンの上限:15億~25億ウォンの住宅は4億ウォン、25億ウォン超は2億ウォンに引き下げ
・事実上、十分な現金資金を持つ富裕層でなければソウルのマンション購入が難しい仕組みに
 | | ソウル龍山区の某不動産屋店頭に掲示された売買物件の一覧。数十億ウォン台の物件が多くを占めている。政府の措置により、現金を持たずにソウルのマンションを購入することは難しくなった |