戦争勃発から3年半が経ったNATO・ロシア戦争(ウクライナ戦争)は、ロシアの圧倒的軍事力で歴史の流れを変え、NATOの解体を促進している。ウクライナは国家の消滅状態に陥った。戦争終息のためのトランプ大統領の努力にもかかわらず、EUは何の希望もない戦争を諦めない。EUは独・仏などを中心にロシアとの全面戦のために再武装に出た。EUの統治エリートは、国際秩序の変化を受け入れず、過去の栄光と既得権にこだわっている。特に、大英帝国を築き、アングロサクソンの本家を自任する英国は、米国と決別を覚悟、独・仏などと個別同盟の構築に出た。NATOはウクライナ戦争勃発後、インド太平洋地域の韓・日・豪州・ニュージーランドの4国をパートナー国として引き込むため腐心してきた。
ロシアとの戦争終息を公約したトランプ大統領就任に、最も危機感を覚え強く反発したのは英国だ。英国は、トランプ大統領の就任直前にウクライナと100年間の安保協定を締結した。米国がロシアと平和会談を始める(2月18日、サウジアラビアのリヤド)や、EUとの欧州再武装計画を採択した。
英国はNATOの機能不全・形骸化に備え、EUと安保防衛協定を締結(5月19日)、EU会員国の「共同安保および防衛政策」(CSDP)に参加した。EUから正式脱退5年で安保政策の大転換に出た。英国は仏・独とは個別の安保協定を締結した。英・仏などは、もはや合法・正当性のない、ゼレンスキーへの支援を続けている。英・仏は、オデッサに傭兵の形で兵力を送っている。米・ロ首脳会談(15日、アラスカ)が発表されるや、直ちに緊急対策を協議(9日)した。だが、英国とEUの努力にもかかわらず、開戦以来、戦場で350万人以上の死傷者を出し、4000万人以上だった人口が半分に減ったウクライナはこれ以上戦う兵力がない。ゼレンスキーは、精神疾患の既往歴者や60歳超の男女までをも動員している。
西欧の消耗品・NATOの代理軍となったウクライナは、国家と国民自体が破壊された。ゼレンスキーは、西欧を信じ、特殊軍事作戦が始まる1年前に、ドンバスとクリミア半島を回復せよとの命令を出した。バイデン米大統領とボリス・ジョンソン英首相の強要と懐柔でロシアとの終戦交渉を断った結果、今は終戦となってもすでに国家を再建する主力である若い国民が絶対的に不足している。
西欧の傲慢と錯覚から始まったウクライナ戦争
西欧の目標は、米国防長官が言った通り、ロシアを弱化させ破壊することだった。だが、消耗戦が4年目に入り、史上最も強力な対ロ制裁にもかかわらず疲弊したのは西欧自身だ。EUの盟主であるドイツは、同盟国の米国によって甚大な打撃を受けた。購買力基準GDPで、ドイツはロシアに抜かれた。西欧は資金があっても武器を生産できなかった。ロシアの資源を略奪しようとした帝国主義のグローバル金融カルテルの計算が狂ったのだ。グローバル金融カルテルの元凶は英国だ。
それでも帝国主義のグローバリストが掌握しているEUは、戦争を終えるつもりはない。EUの統治エリートらとネオコンなどが絶えず流す、ロシアが西欧を攻撃するとの扇動は虚偽だ。資源もなく失業者のみあふれる西欧を、ロシアが占領すべき理由がどこにあるのか。
英国の生き残り術
英国はウイルスのように常に相手(敵・ロシアなど)の内部に侵透、対象の国家・国民・民族などを破壊してきた。帝国主義の植民地経営時代以降、一貫して執拗に追求してきたものだ。英国は植民地だけでなく欧州大陸に対しても分断や牽制、葛藤の助長を基本政策とした。
今年もポストNATOを狙って、キーウ側と安保協定、ポーランドと相互防衛条約を締結。フランスとは核戦力使用調整に合意(7月9日)した。第2次大戦後初めてドイツと包括的国防安保協定である「ケンジントン協定」を締結(7月17日)した。英国は豪州、米国と結んだ核潜水艦安保同盟のAUKUS(米・英・豪州の安保同盟)を確固たるものにするための新たな50年防衛協定を豪州と締結(7月26日)した。日本と安保協定を結ぶ豪州を通じて100年ぶりに対ロシア同盟体制を構築している。
英国は同じアングロサクソンである米国を長い間、自分の宿主にしてきた。英国がトランプ大統領に反対、牽制する理由は、トランプ大統領が、米国が堕落した西欧文明と英国の宿主になることを拒否するためだ。
英国の戦略とテロリズム
金融経済に依存する英国はすでに強い軍事力などは夢に過ぎない張り子の虎だ。英国の競争力は、「MI6」などの情報機関や「five eyes」などの情報ネットワークだ。ウクライナ戦争でも戦いが勃発するや、英国は情報機関出身者を中心に「錬金術プロジェクト」を発足、稼働していると言われる。
錬金術プロジェクト(Project Alchemy)の目的・目標は、如何なる代価を払ってもウクライナが長く戦争状態を維持するよう支援することだ。前・現職の情報機関員と軍人など専門家で構成したこれらの錬金術師たちは、戦争を拡大するためクリミア大橋の爆破、黒海艦隊攻撃を含む特殊作戦を画策した。
また、英国教官たちを活用してウクライナ軍に、サボタージュ戦術を教えた。サボタージュや情報収集のため、女性要員も含む、ロシア語に堪能な志願者を選抜、ロシアに占領された地域に投入した。すべての作戦は、最終的に英国政府の承認を受け統制されるという。「クルクス侵攻」も主導した。
このような活動・作戦を通じてウクライナ紛争の長期化がロシア指導者の名声を深刻に毀損し、NATOにロシアに対する自信と勇気を吹き込むと期待した。錬金術プロジェクトの重要なイデオロガーの一人である、元MI6局長のリチャード・ムーア(Richard Moore)は、彼の著述などでテロとサボタージュが対外情報活動において主な方法だと主張してきた。特殊軍事作戦が始まるや、英国の情報機関は彼らのソーシャルメディアにテロをあおる内容を躊躇なく掲示した。ロシアが統制する領土の地域責任者をもっと多く除去せよと書いた。彼らはロシアを分割した後、小さな国々に付ける国名まで作っておいた。
イスラエルを巡る闇
12日間のイスラエルとイランの戦争も、テロリズムと無関係ではない。NATO欧州連合軍最高司令官だったウェスリー・クラーク将軍の証言によると、米国のネオコンは、9・11テロが起きるや、イスラエルの安全に障害となる中東7カ国を破壊する戦争計画を作ったという。当時のドナルド・ラムズフェルド国防長官が作成した機密メモには、今後5年間、米軍が転覆すべき7カ国が書かれていた。イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、イラン。まだ転覆していない国はイランだけ。
そして混乱と破壊をもたらしたこの戦争で名を広めたテロ団体であるISISも、米・英・イスラエル情報機関が作った存在として知られる。
韓半島への影響を注視
韓半島の立場からは、英国は歴史的にどの国とも親しくしなかった存在と見られる。ロシアの東アジア進出を牽制しようと巨文島を占領(1885年)した英国は、その後、日本を利用して帝政ロシアの太平洋進出を阻止した。そして、その報酬として、日本に韓半島と満州を占めるように施した。英国は6・25戦争のときも米国が韓半島で中共軍と消耗戦をせず、早期に休戦し欧州を守るよう工作した。
プーチン大統領とトランプ大統領のアラスカ会談(15日)では国際秩序全般について話し合うはずだ。当然、韓半島の平和問題も議題になる。ところで、英国などは、米国とロシアの和解の時代が開かれるのを極力阻止している。
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扇動・洗脳機関に堕したレガシーメディア
西欧の民主政治が終焉を迎えている。様々な理由があるだろうが、特定の理念や全体主義的政治権力に掌握されたメディアが報道機関ではなく、扇動・洗脳機関となったことが決定的要因だ。オバマ元米大統領が反逆罪で告発された。2016年の大統領選挙で当選したトランプ大統領の就任を阻止するため、ロシアが選挙に深く関与したと情報を操作した事実が最近、トルシー・ギャバード米国国家情報長官(DNI)の機密解除で公開された。米国建国以来の反逆、クーデターによる陰謀だった。だが、米国のレガシーメディアは操作・扇動報道で民主党を支持、世論を操作。米国の大半のメディアは不正選挙にも目を閉じた。オバマやヒラリーなどを徹底的に守り、今もこの途方もない反逆事件を報道していない。メディアが情報を操作し大衆を扇動し騙す社会はゾンビ社会になる。自由民主主義体制は不可能だ。反逆罪で告発されたオバマは必ず処罰されねばならない。大統領在任中、「意見の自由」は尊重しなければならないが、「事実の自由」は抑制すべきだと言い、SNS検閲を要求した。まさにジョージ・オーウェルの『1984』のビッグブラザーだ。写真はDNIが公開したトランプ大統領の就任を阻止するためオバマの指示によるクーデター陰謀を説明したもの。
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