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最終更新日: 2025-06-27 12:39:54
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2025年06月19日 05:47
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東アジア文字考~漢字を巡る遥かなる旅 第25回 水間一太朗
令和の米騒動と理気説

 「理」と「気」

漢字の「理」は、玉を磨いた筋目の意。そこから道理・真理、さらに形而上学的な本体、普遍性を表す語となった。「気」は、雲気・呼気の意。そこから、万物を生動させる原質、ひいては現象を表す語となった。記紀でいえば、「あめのみはしら」を中心として「たかみむすび」と「かみむすび」が相抱擁帰一してエネルギーが生じるという表現となる。この概念は東アジアの人々の思想のベースとなった。
やがてそれは宋学として整えられ、宇宙万物の形成を「理」と「気」の集合として説明するに至った。朝鮮王朝時代には、李退渓(名は滉、1501~1570。イ・テゲ)と李栗谷(名は珥、1536~1584。イ・ユルゴク)によって更に深められた。前者は「理」を根源的なものと見なし道徳主義に基づいた主理説を唱え、後者は「気」を「心」に呼び換えその影響を排除しない独自の主気説を唱えた。互いのグループは、論争を通じ理論を深めた。しかし性理学者たちの論争は、次第に観念的で些末な論争へと変貌した。生活する人々の思いから乖離していったのである。
「気」の旧字は「氣」であり、「气」と「米」により成り立つ。「气」は雲の流れを表し、「米」を客人に振る舞うことが「氣」という漢字となった。陰と陽の主体は常に入れ替わり、互いに補い合い一体化する。すなわち結び合うことがエネルギーの源である。「米」を互いに振る舞い合うこと、これがすなわち「気」の原意なのだ。
戦後の国語審議会の愚挙で「氣」が「気」となった。「気」は江戸時代の略字が採用されたわけだが、そこから「氣」の真意を導き出すことは不可能である。

 令和の米騒動

令和の米騒動が続いている。米を主食としている私たちには確かに生命に関わる問題である。しかしながら、最も身近な存在である「米」であるが故に、根拠の希薄な風聞が行き交うこともまた多い。
政治家は民を扇動する。米卸業者の利益を前年比500%と表現しても意味がないことは経済人であれば誰もが理解できる。前年が儲かっていなければ、少しでも利益が出れば前年比はとんでもない数字に化けてしまう。ところが商売に携わっていない人々にとっては米卸業者が暴利を貪っているかに映る。印象操作である。
小泉元首相は言葉が巧みだった。首相就任演説での「米百俵」の話に多くの民は酔いしれた。それが身近な「米」の話だったから効果的であったのだ。印象操作は功を奏し、気がつけば国民は負の遺産を背負わされていた。
漢字にも印象操作ともいえる風説が横行する。「米」の字は「四方八方に広がる様子」を表現しているとか、「八十八の工程」を表現しているというものまである。甲骨文字や金文などを見ればそこに根拠がないことは明らかだ。「米」の字は、籾や稲穂の形象文字なのである。
ただし、人生教訓としての説話として使用することを妨げるものではない。「八十八の工程」の説話は、米の供給の安定と農家の揺るぎない基盤が醸成された江戸時代に確立されたものだ。お百姓さんとお天道様に感謝の心を表現した、なんとも秀逸な説話ではなかろうか。
今、政治に求められているのは「まこと」である。韓国でも日本でも今の政治家の言動はすこぶる軽い。選挙の様相はアイドル歌手の人気投票と同じものになってしまった。人々の本当の幸せを願って行動できる政治家はいったいどこにいるのだろうか。
かつて宇宙の根本原理を探求し、天と人が一つになることを願って発展した理気説があった。しかしそれは、次第に政治の道具となり、末梢的な論争に堕した。そして消えていった。本来の「理」と「気」とは何か。それを問い直す時が来ている。(つづく)

 李退渓は1000ウォン紙幣(図上)、李栗谷は5000ウォン紙幣(図下)に肖像が採録されている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水間 一太朗(みずま いちたろう)
アートプロデューサーとして、欧米各国、南米各国、モンゴル、マレーシア、台湾、中国、韓国、北韓等で美術展企画を担当。美術雑誌に連載多数。神社年鑑編集長。神道の成り立ちと東北アジア美術史に詳しい。

2506-18-06 6面
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