著者は、大阪市生まれの在日3世。幼い頃から両親が家庭で韓国語を使う機会が少なく、民族学校に通っていた学生時代には韓国語に対する苦手意識さえ持っていたというリアルな告白が読み手に響く。
いつかソウル支局で働くことを目指し、2年半勤務していた新聞社を体調不良などの理由で退職、「KPOPが好き」という今風の理由で30歳からの韓国留学を決意。入念な留学準備により、元々低いレベルではない韓国語の学び直し=リスキリングを通じて、語学堂5級から高麗大学での留学生活をスタートした。韓国留学の経験者から見て、個人の置かれた環境や語学レベルの違いなどはあるだろうが、著者の語る体験に親近感を覚えることだろう。課題や発表などへの取り組み姿勢から、著者がまじめな優等生タイプだったことがうかがわれる。
そのような著者像からして意外なのは、本書の後半部で語られる、留学生活を通じ徐々に感じるようになった在日としての葛藤を語った場面だ。詳細については、読者一人ひとりが本書を読み追体験することを勧めたい。
非常になめらかで読みやすい文体で綴られた、一年間の韓国留学体験記となっている。
ワニブックス刊
定価=990円(税込)
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