今回は韓国経済の現状を概観した上で、韓国国債について考えてみたい。
[韓国経済の現状]
韓国政府系シンクタンクである韓国開発研究院(KDI)が発表した「5月の経済動向」では韓国経済について、「外部環境の急激な悪化に伴い景気減速を示唆する指標が表れている」との総括をしている。KDIはこれまで「景気の下振れリスク」または「景気の下押し圧力」という表現を使ってきたが、更にトーンを強めて「景気減速」に言及したのが今回の特徴である。長期間続いた下振れリスクが現実化し、実際に景気減速局面に差し掛かったことを意味すると見られている。
韓国経済はまだら模様ではあるが、悪化しつつあると見られている。なお、韓国政府・統計庁が発表した雇用動向によると、4月の韓国の失業率は前年同月比0・1ポイント改善した2・9%となった。失業者数は85万4000人で、同3万1000人減少した。
また、韓国の外貨準備高の順位は世界10位に下がっている。
金(Gold)を保有する比重が高いドイツが順位を上げたため、韓国は1ランクダウンしたと説明。韓国の外貨準備高はここ数年間、概ね8~9位という順位を保っていた。
10位という順位は、2000年12月以降の韓国銀行の統計で最も低い順位となる。23年8月以降、韓国の外貨準備高の順位は9位を維持していた。
基軸通貨・米ドル確保に懸念があり、国際決済への不安に繋がる状況にある韓国としては心配な状況となっている。
[韓国国債]
韓国では、「日本が、キャリートレードによるテクニカルな円安ではなく、本格的な円安傾向となれば、韓国製品の為替による競争力が失われていく。それは韓国経済にとって、ダメージとなる可能性が高い」との見方が出ている点を指摘しておきたい。
円安の可能性については、実際に米国のJPモルガンが、「これまで推奨してきたスイス・フラン売り、円買いの持ち高解消を勧める。円にも相当なリスクが存在するため、今こそスイス・フランの安定性を再評価すべきである」というレポートまで発表し始めている。
グローバル投資家が一斉に円を売ってスイス・フランに乗り換えれば、それだけ日本円のリスクが高まるのは目に見えており、その円の資産を持つ韓国などにも悪影響が出ると共に、上述したように、それが本質的な円安に転じれば、韓国の輸出産業にも少なからぬダメージを与えよう。
こうした中、韓国では、日本の状況を見ながら、韓国国債についても議論が出始めている。
国の借金による副作用について、韓国は基軸通貨国・米国、そして日本より遥かに深刻になっているのではないか、との声すら出てきているのである。
世界最高の安全資産とされてきた米国と日本の国債について、金融市場での入札不調が相次いでいる中、米国のトランプ大統領が大規模な減税法案を強行している。
米国と日本は負債の比率は極端に高いが、それでも基軸通貨国のため、少なくともこれまで国際金融市場で大きな影響は出なかったと言えよう。
ところが負債比率の高さにもかかわらず国の負債を減らすどころか逆に増やそうとする動きを示したため、国債の入札不調になっているとの見方を市場は示し始めている。
更に、基軸通貨国である米国や日本でさえ、国際金融市場で厳しい現実に直面しているのであれば、基軸通貨国でもない韓国が財政の健全性や国の経済を守るよう、国債発行を厳しく管理しなければ、韓国経済はまたまた国家破綻するとの懸念も出始めているのである。
韓国国債についてもしっかりと注視し、韓国経済を分析していきたいと思う。
以上、少しでもご参考になれば幸いである。
(嘉悦大学副学長、愛知淑徳大学名誉教授 真田幸光) |