韓国の教育システムには、日本とは異なるユニークな仕組みが存在する。その一つが「雇用条件型契約学科」。この制度は、大学教育と雇用を直結させることを目的としたもので、産業界と教育機関の連携を強化し、学生に安定した就職先を提供する革新的な取り組みだ。近年、韓国では若年層の就職事情が悪化していることから、この制度への注目度が高まってきている。
雇用条件型契約学科は、韓国の大学が特定の企業と契約を結び、その企業が必要とする人材を大学の授業を通して育成する制度だ。
最大の特徴は、入学と同時に卒業後の企業への就職がほぼ確約されている点。学生は大学入学時に将来の就職先が決定、大学の授業を通じてその企業で働くための専門知識やスキルを学んでいく。
雇用条件型契約学科は、韓国政府が推進する「産学協力」の一環として導入された。産学協力とは、企業と大学が連携して教育プログラムを設計し、実践的な人材育成を行う取り組み。企業が求める人材像を明確に定義し、それに基づいたカリキュラムを企業が大学側が提供することで、即戦力となる人材を確保する。
■企業のニーズに合わせ
て授業をカスタマイズ
学生は通常の大学入試と同様に、この学科の入学試験にエントリーする。選考プロセスでは、学力だけでなく、企業が求める適性や意欲も評価される。合格した学生は、入学時から「契約学生」として扱われ、卒業後の雇用が保証される。
カリキュラムは、企業のニーズに合わせてカスタマイズされる。一般的な大学教育とは異なり、実践的な授業やインターンシップが重視され、理論だけでなく現場で即座に活用できるスキル習得が目標となる。たとえば、半導体産業と契約を結んだ学科では、半導体設計や製造プロセスに関する専門講義が中心となる。
雇用条件(給与、勤務地、職種など)は事前に合意している。
■13大学・18学科で同制
度を導入
進学社によると、2026年度の先端分野の雇用条件型契約学科の選抜は13大学、計18学科で実施される。
ソウル大学、延世大学、高麗大学、漢陽大学、韓国大、西江大などの有名大学で雇用条件型契約学科が設けられている。提携先企業も、サムスン電子やSKハイニックス、LGディスプレイ、KAISTや現代自動車など韓国を代表する大手企業だ。
今年は成均館大学が契約学科を追加で設立し、昨年より募集単位が一つ増えた。成均館大は昨年7月、サムスンSDIと「バッテリー工学科」設置協約を結んだ。26学年度の初入学以降10年間、毎年30人規模の新入生を選抜する計画だと発表した。
雇用条件型契約学科は、韓国の若年層の就職問題に対する一つの解決策として期待されている。韓国では、大学進学率が非常に高い一方で、卒業後の就職難が深刻な社会問題となっている。特に、大企業への就職を希望する若者が多い中、中小零細での人材不足が続いているというミスマッチが課題だ。
■第4次産業革命に対応
した人材を育成
韓国政府は「第4次産業革命」に対応した人材育成を重視しており、企業は、IT、AI、バイオテクノロジーなどの先端分野で雇用条件型契約学科を積極的に推進している。同制度は次世代産業の競争力強化を実現できるという側面もある。韓国は官民一体となって成長することで、世界有数の経済大国となったが、産官学の協力のもと、有望視されている産業分野でトップに立つことが期待される。
■日本はインターンシッ
プや共同研究で産学連携
日本でも類似の取り組みとして、企業と大学が連携したインターンシップや共同研究があるが、雇用条件型契約学科のように、入学時から就職先が保証される制度はない。企業が大学の授業内容を決定することに対し、学問の自由・独立性が損なわれるのではとの懸念もあるが、若者の未来と産業の発展を両立させるこの取り組みは、日本にとっても参考になるモデルと言えるのかもしれない。
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