裁判取引と開廷の遅延、有罪を無罪へと塗り替えるなど、法の秩序を無視する裁判官を、韓国では軽蔑を込めて「法律のエンジニア」と呼ぶ。司法部では、国民の信頼を失いかねない事例が相次いでいる。
(ソウル=李民晧)
■裁判官が法の秩序を無視
韓国司法部の最高機関は最高裁と憲法裁判所だ。この2カ所で下された判決は覆すことができない。しかし最近、憲法裁判所の判決に異論を唱える声が相次いでいる。
その一例となるのが今年2月27日、中央選挙管理委員会(以下、選管委)に対する監査院の監査に対し、憲法裁判所が下した「違憲」という判決だ。司法において最たる権限を持つ憲法裁判所が、「親族を採用する伝統がある」という選管委の愚劣な言い分に「免罪符」を与えたことになる。それに対し国民の怒りを代弁したのが、元検事であり、かつて国土部長官を務めた元喜龍氏だ。
「不正と汚職の温床である選管委に免罪符を与えた憲法裁判所の決定は、若者に二重のダメージとなった。(職員の親族を)不正に採用したケースが約1000件も判明したにも関わらず、行政はおろか監査機関ですら確認できない『アンタッチャブルな選管委』という不公平に対し、若者世代らは怒りを抱いている」
また、憲法裁判所は先般、崔相穆・大統領権限代行が憲法裁判官候補として馬恩赫氏の任命を保留したことに対し「国会の権限を侵害した」と判断した。
憲法裁判所の裁判官はさらに、禹元植・国会議長が、国会の決議を経ずに行った措置に対し、国会側に「手続き上の不備」を改めるよう求めた。
法律に基づいた判断であれば、憲法裁判所は「却下」とするのが妥当だが、実際は「法をもしのぐ存在」のような動きを見せた。これではまるで、「採点者が受験生に答えを教える」行為に等しいと言わざるを得ない。
■官僚主義がはびこる司法部
韓国の司法は、英国の作家シェイクスピアの戯曲『ヘンリー6世』に登場する「弁護士を皆殺しにしよう」というフレーズを彷彿とさせる。法律に携わる者たちが富と権力を独占し、官僚主義を助長させ、法治主義を歪曲するといった行為はまるで戯画のようにこっけいだ。
尊厳と尊敬の対象であるべき司法が、韓国では機能せず「死に体」となっているのかもしれない。
ちまたで「法律のエンジニア全盛期」とささやかれている今、ある人は裁判所を指し「地獄に誰もいないと思ったら、鬼は皆ここに集まっていたようだ」と嘆く。
犯罪者と裁判官の境界が曖昧になった国は、もはや法治国家ではないという自嘲も聞こえてくる。一刻も早い正常化が待たれる。
憲法裁判所の判決に対し抗議集会をする若者たち
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