昨年12月3日、尹錫悦大統領に対する1回目の弾劾決議で、野党が掲げた理由の一つが「韓米日の共助」だ。直接そのような表現こそしていないものの事実上、問題としたのはこの部分だ。野党6党が弾劾案で批判したのが尹政権の外交政策「韓米日共助」だとしたら、今後の安全保障政策について疑問視せざるを得ない。 (ソウル=李民晧) 物議を醸す文言は、弾劾案(尹錫悦大統領弾劾訴追案)の結論部分、2項目の段落に記されている。昨年12月3日、共に民主党の李在明代表ら野党議員が発議した弾劾案に掲載された原文は以下のとおりだ。
「いわゆる価値外交という名目で地政学的バランスを無視したまま、北韓と中国、ロシアを敵対視し、日本を中心とした奇妙な外交政策に固執し、日本に傾倒した人物を政府の主要な役職に任命するといった政策を展開することで、北東アジアにおける孤立と戦争の危機を招き、国の安全保障と国民保護の義務を放棄してきた」
つまり、弾劾理由の一つに外交政策を挙げたのだ。順番で言えば2番目に掲げられている。直接的に米国という文言は使用されていないものの、日本については名指しで批判している。彼らが指摘したポイントは二つだ。 一つは「日本中心の外交政策を展開した」こと。 もう一つは「日本に傾倒した人物(知日・親日派)を要職に起用した」こと。 前者が指摘するのは、尹政府の対日政策は誤りである、というものだ。停滞していた対日外交を正常化させたのが誤りだということなのか。だとすれば、その弾劾理由がターゲットとするのは日本だけなのだろうか。 対日外交と韓日協力が米国との同盟強化に直結する問題であることは、韓国内の政党・派閥を超えた共通の認識だ。 安保体制の構築においては、日本を除外したまま米国に直結させることは不可能だからだ。「韓米日3カ国共助」を推進した国家指導者に対して「誤った選択をしたことが弾劾すべき理由」と解釈することも可能なのである。 後者は反日フレームカードだ。保守右派は親日であり、反民族的な人々であるという枠組みを作り、その中で、法により保護されている大統領の権利「人事権」を槍玉に挙げた格好だ。白黒論法の典型的なパターンである。野党6党は尹大統領に対する2回目の弾劾訴追案において、外交に関する理由部分を削除して国会に提出した。
米国からの異議申し立て
米国では多くの韓国関係者が、野党側が提出した大統領弾劾案に異議を申し立てた。 米国務省東アジア・太平洋担当のエヴァンス・リビア前上級副次官補は、『米国の声(VOA)』とのインタビュー(12月9日付)で、弾劾案に尹大統領が進めた韓米日3カ国協力が含まれている事実に対し「非常に衝撃的」と述べた。 リビア氏は「最近の韓米同盟関係は、私が覚えている中で最も生産的な時期だった」と振り返りつつ、韓日間の信頼回復や韓米日パートナーシップ推進が弾劾の理由である場合「懸念されるシグナル」であると述べた。 ブルッキングス研究所のマイケル・エドワード・オハンロン上級研究員も「韓米日関係が改善されている中、野党によるこうした(弾劾理由)主張は間違っている。韓米日3カ国関係はこれまで以上に強固だ」と断じた。 ハリー・ハリス前駐韓米国大使は「尹大統領の弾劾理由の一つに、日本との外交が挙げられている。日本との協力かつ肯定的な関係を維持することの重要性を韓国も理解してほしい」と異議申し立てに加わった。 ハドソン研究所のケネス・ワインスタイン日本部長は「韓国野党が反米・反日を掲げるということは、同盟の結束に対する否定的なシグナルを北韓と中国に送ることになる。ひいては来るトランプ政権にも(韓国が)否定的なシグナルを送ることにつながるだろう」との見解を示した。
「反日・反米」の本音が露呈
共に民主党も、「米国との同盟が重要である」という点だけはブレることがなかった。 これは大統領候補に立候補した李在明代表も同じだ。そうした彼らの対外的な姿勢は虚偽だったということなのだろうか。「12・3弾劾案」は、「反日・反米」であるという彼らの本音を露呈させてしまったのだ。 | | 与党「国民の力」本部前で行われている尹錫悦大統領の弾劾を求める集会 |