中央銀行である韓国銀行が公表した経済展望では、今年の韓国の実質国内総生産(GDP)の成長率見通しが、前回予測の2・4%から2・2%に引き下げられている。韓国銀行は今年の成長率見通しについて、5月に2・5%としたが、8月に2・4%に下方修正していた。韓国銀行は敢えて厳しい見通しを示したと見られている。
こうした一方、ユン・ジンシク韓国貿易協会長は、韓国の輸出に関して、「今年の韓国の輸出額は前年対比8・4%増加の6850億米ドルとなり、歴代最大を記録するであろう」との見通しを示している。ユン会長はまた、「過去に日本と輸出規模を比較するのは想像も出来なかったことであるが、もう日本を凌駕するかどうかというレベルにまで韓国は来ている」と感慨深げにコメントした。
直近では、厳しい状況にある韓国経済ではあるが、その体質は間違いなく強くなってきていると言えよう。そしてその韓国経済の更なる発展は、中国本土との経済関係の発展が大きく影響を与えていくことはほぼ間違いないであろう。もちろん韓国にとっては、米国との経済関係の発展も重要である。
従って、米国で対中政策には一般的に厳しいスタンスを示すと見られているトランプ政権が再び出帆することとなった今、韓国の懸念は大きくなっている。そうした中、韓国国内では、中国本土に対する警戒感も出てきていると思われる。筆者は、中国本土・習近平政権の外交政策の特徴は、「全方位外交」、「借金漬け外交」と共に「戦狼外交」が挙げられると考えている。
開発途上国の中でインフラ開発などの経済基盤を築き、発展を目指そうとしても、返済能力に疑問がある国には、国際機関である世界銀行グループはなかなか投融資が出来なかった。これを横目で見ていた中国本土は「ホワイトナイト」よろしく、これらの国に対して返済能力が低いことを承知の上で、返済条件を厳しくし高金利、厳しい担保設定などもして、貸し付ける。案の定、これらの国々の返済が滞ったところで、債権者の権利を行使。例えば、港を中国本土軍が利用出来る軍港としていくなど、高利貸しのような動きにも出た。
これが借金漬け外交、「債務の罠」の基本的姿であり、その餌食となった国々は、例えば、「ジブチ、パキスタン、モルディブ、スリランカ、ベネズエラ、エチオピア、トルクメニスタン」などが挙げられる。
韓国が、この戦狼外交の対象となることもあり得るとの見方も出てきているのである。更に中国本土政府は今年10月29日、反スパイ法違反の疑いで韓国人を逮捕したと発表した。この反スパイ法によって、日本人も逮捕されていることはご高承の通りであるが、中国本土は本格的に逮捕対象を拡大しているようである。
こうした中、韓国国内では、中国が自国内に住む韓国人にスパイ容疑を適用すると、中国本土で働く技術産業従事者の活動が大幅に萎縮しかねないという懸念が示されている。中国本土にいる韓国の技術産業従事者による活動は制約を受けることが避けられなくなったとの見方がある。
最後に、韓国国内ではこうした声が出ている中、日本は如何であろうか? こうした姿勢を取る中国本土政府との信頼関係は如何なものなのであろうか? 中国本土と、韓国も日本も対立する必要はない。むしろ対立してはならない。
しかし、ここでもやはり日本や韓国は、国家として毅然とした態度を取り、中国本土政府と、日本や韓国の倫理観を基にして堂々と対応していくべきであると考える。中国本土、中国人がいないと生きていけない日本や日本人、韓国や韓国人を作ってはならないと筆者は考えている。我々は平和共存を目指す、対等な関係に基づくアジアの国々でありたい。
以上、少しでもご参考になれば幸いである。
(嘉悦大学副学長、愛知淑徳大学名誉教授 真田幸光) |