昨年11月を機に、北韓の対南政策が転換。朝総連にも13項目にわたる指示書が出されその動向が注目されている。一方で、日本在住の朝鮮籍保有者は昨年2万4305人(前年比4・2%減)を下回り、転換点を迎えているといえる。朝総連の動きに、より注意すべき状況下にある点は言うまでもない。
先細る在日「朝鮮籍」
先月21日、8月下旬から訪北していた朝鮮大学校の生徒ら約50人が帰日。滞在中の先月9日、首都・平壌で開催された建国76年を祝う式典があり、韓国籍保有者が多い訪北団もこれに参加した。今後も同校の生徒らによる訪北が続き、総計140人に上るという。
高徳羽・朝総連東京本部委員長ら6人で構成された代表団も式典に参加。10月2日付『朝鮮新報』紙で現地での体験レビューが詳細に報じられている。北韓内部で感じたとされる経済成長や、平壌で満喫したビアテラス体験などについて好意的に述べている。
■「朝鮮籍」在留者の現状
今年3月に発表された日本の出入国管理庁の発表によると、令和5年末の在留外国人数は総計341万992人(前年比10・9%増)で、過去最多を更新した(総計は、中長期在留者312万9774人と、特別永住者28万1218人を足したもの)。
韓半島出身者及びその子孫に該当し、韓国籍などいずれかの国籍があることが確認されていない人は、在留カード等の国籍・地域欄に「朝鮮」の表記がされる。昨年の朝鮮籍保有者の総数は2万4305人(前年比4・2%減)。10年前が3万8491人であったのと比べても、減り幅が大きいことがわかる。
国籍・地域別に見た上位10カ国のうち、中国・ベトナムに次いで第3位につけている昨年の韓国籍保有者の総数は41万156人(前年比0・3%減)。10年前が48万1249人であったのと比べると、減っているがほとんど横ばいだ。
昨年は、韓国籍・朝鮮籍保有者の数値だけ減少した。さまざまなかたちで日本にやって来ている、技能実習生や留学生などの中長期在留者に支えられ、日本の在留外国人数は過去最多を記録した。
韓国籍保有者も国際情勢の流れに漏れず、総計のうち15万6277人(38・1%)が中長期在留者であるのに比して、朝鮮籍保有者の同数値は477人(1・96%)と、極めて低い。
■「統一」志向の未来を
北韓当局が朝総連に向け、新たな対南政策を遵守するよう促したという報道が先月、『東亜日報』紙上で出された(ウェブ版9月4日付)。「統一」を含む金日成・金正日の遺訓さえ塗りつぶす作業が進行している北韓内部の混乱がうかがえ、朝総連を通じた日本への広がりを警戒した意義のある報道だった。
ただ実際のところ、今年に入ってから”某大手韓食メーカーが北韓当局の対南政策に従い、不自然なかたちで日本市場からの撤退を決めた”といった動きなどは見られていない。
都内の市場関係者は、「何の義理があって(北韓の対南政策に)従わなくてはいけないのか。周囲の在日も同じように、懐疑的に捉えている。ビジネスに携わる人々が”北韓の指針を優先し・仕事を捨てる”といったケースは聞いたことがない」としている。
ただし「朝鮮籍」離脱者らが韓国籍・日本国籍への変更などを通じ、従北を実行すべく手をこまねくといった事例は生じてくるかもしれず、警戒が必要だ。
今後、日本各地の朝鮮学校で新たな対南政策を受け入れ「韓国籍」の学生を除外する動きなどが現れてきたら、今回のような訪北事業の開催も難しくなっていくだろう。
朝総連の動きに、より注意すべき状況下にある点は言うまでもない。新たな全体共産主義勢力としての朝総連には、朝鮮籍保有者より韓国籍保有者の方が多くなっていくと見られる。
ただ、朝総連に属す人々が約70年かけて進めてきた「統一」を志向する対南政策が、金正恩総書記の教示によって突如、そのインフラが破壊されてしまった背景を抑えておくことは重要だろう。 |