韓国の国会議員総選挙まで2カ月余りとなった。韓国に限った話ではないが、いまの自由民主主義国家における選挙戦で問題となっているのがポピュリズム政策、なかでも悪質なのが、財源の裏付けがない「バラマキ型」の公約だ▼野党「共に民主党」の李在明代表は、少子化対策として大学授業料を含む教育費一切を無償化する「出生基本所得」を提案した。少子化は韓国最大の問題といってもいいが、李代表は「財源は今後、用意していく」と述べた▼与党「国民の力」の韓東勳非常対策委員長は、「全国の主要旧都心の鉄道を地下化し、上部空間を統合開発する」と公約。莫大な費用がかかるこの計画に対しても、財源は明示されていない▼少子化とともに韓国の負債問題は深刻だ。家計・企業・国家債務はいずれも先進国のなかでも最悪な状況にある。政府の財務状況も昨年度は過去最大規模の税収不足が問題化した。国税が当初の政府予想より56兆4000億ウォン少なく、借金は1100兆ウォンを超えた▼文在寅政権は文在寅ケアをはじめとしたポピュリズム政策を推し進めた。社会的弱者を救うという大義名分であったが、税収と比較して歳出が大きく増えた。尹錫悦政権発足後、緊縮財政へと舵を切ったが、現実的に、それにも限界がある▼国の借金を負担するのは若者だ。2000年以降に生まれた世代の場合、生涯所得の40%以上を税金として納めなければならないという予測も出ている。果たしてそんな国で誰が子供を生み育てようと思うだろうか。 |