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2023年11月07日 12:58
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【金聖大物語】白頭学院~人生の羅針盤~ 第10話


困難に負けず道を進み続ける 


白頭学院の校舎建て直しに全力を注いだ金聖大は、建築費の支援者「経済理事」の募集を開始し、自らも進んで1億円を寄付した。
地道な努力を続け、在日同胞に関する行事や集いには真っ先に駆けつけた。日本の隅々まで、まさに東奔西走の募金活動となった。さらには、ソウルで同胞関連のイベントが開かれるという情報を耳にすると、すぐさま海を渡って現地に赴いた。
「建て直しに奔走した時間は、人生で最も忙しく、多事多難な時期でした。それでも絶対に目標を達成するという強い信念があったのです」
休む間もなく活動に勤しんでいたところ、体の状態に赤信号が灯った。突然気力を失い、食欲も低下した。病院を受診したところ、腎機能に問題があることが判明した。直ちに手術を要するほどの重症だった。
その頃、まさに青天の霹靂といえる事態が起きた。末の愛息子、テソクが交通事故で帰らぬ人となってしまったのだ。
「空が崩れ落ちたようが気がして、仕事など何一つ手に着きませんでした」
何もできないまま、ひたすら苦しみもがいた。自分の命よりも大切にしてきたテソクの死は、人生を根底から覆されるほどの衝撃だった。
金聖大が喪失感と苦しみにあえいでいる間、白頭学院の建て直しプロジェクトも停止していた。「このままではダメだ。私には責任がある。公義に向かって進み続けなければならない」――。疲れ果てた金聖大は、どうにか自分の気持ちを奮い立たせた。
「個人的な事情でプロジェクトを投げ出すことはできませんでした。約束は守らないといけませんから」
金聖大は韓国と日本を回り、ありとあらゆる人に会った。世の中には様々な人がいた。1円たりとも払わない人もいたし、生活が苦しい中でも毎月1万円ずつ寄付を続けてくれる人もいた。白頭学院には関わりのない篤志家にも出会った。中でも、最も記憶に残っている人物がいた。
「韓国教育財団の徐東湖理事長です。統一日報の姜昌萬社長に仲介していただき、1000万円を個人で寄付していただくことになりました。そのお礼も兼ねて上京し夕食で中華料理を囲んだところ、その場で理事長が3000万円を支払うと仰るのです。本当に驚きました」
民団と傘下団体、新韓銀行の在日同胞の株主たち、在日韓国学校の理事長たち…。世の中は困ったときに手を差し伸べてくれる温かい人々であふれていた。
2015年5月9日、大阪白頭学院(建国幼・小・中・高)の校庭で新校舎の竣工式が行われた。
「当学院は在日同胞の民族教育の殿堂です。新校舎の完成を機により良い教育環境を整えることができました。今後も、在日同胞社会はもちろん、国際社会をリードしていく人材を育成していきます」
理事長・金聖大の声は震えていた。5年間にわたる募金運動が走馬灯のように思い浮かび、思わず涙がにじんだ。竣工式では、数百人の同胞が晴れやかな顔で新校舎を見上げていた。
老朽化した校舎が一転、6階建ての90もの教室を備えた最新の建物へと様変わりしたのだ。開校70周年を1年後に控えたその年、同校にとっては「第2の建学」となった。
「今日の私があるのは、多くの方々に支えていただいたおかげです。イ・ギョンテ校長先生が道を照らす灯となり、多くの友人や同僚、先輩後輩たちが助けてくれました。そうした教えはすべて、白頭学院で学びました。ですから、私の人生の羅針盤はまさに白頭学院なのです」
歳月が過ぎるのは早いもので、金聖大は現在、人生の黄昏期となる80代半ばを迎えようとしている。貿易商として韓日を行き来し、育英家として在日同胞教育を支えてきた。10代の頃に学校で学んだ教訓を生きていく力に変えた金聖大は、今後も後輩に希望を与える師として走り抜けていくだろう。
<完>
(ソウル=李民晧)

2023-11-08 3面
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