訪日を終えた尹錫悦大統領は、おそらく予想外の土産を手にして帰国した。シャトル外交の再開、半導体関連品のホワイト国リスト復帰と、それに伴うWTO提訴取り下げ、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の「完全正常化」宣言と、少なくとも首脳間では雪解けムードが漂う▼会談外でも大きな話題があった。両首脳の食欲である。二人は会談後、夫人をともないすき焼きを堪能。その後、男だけで別の店に移動し、通訳のみを交えながらオムライスに舌鼓を打ったという▼酒も入った。ビール、焼酎、日本酒。それらをとんかつやハヤシライスと一緒に楽しんだようだ。ともに還暦を過ぎた両首脳(尹大統領62歳、岸田首相65歳)の食べっぷりに、SNSは沸いた▼とはいえ、両国内で反対意見がないわけではない。特に尹大統領は今後、国内世論をどうまとめて今回の合意内容を有効なものにしていくかが手腕の見せ所だ▼尹大統領は、「(両国間で)矛盾したり食い違ったりする部分があっても、調和するようにするのが政府の役割であり、政治指導者がしなければならない責務」と語った。韓日両国が前に進めるように批判を覚悟で決めたのだろう▼尹大統領は今頃、会談の成果を目の前に並べ、一つひとつをどう処理するか悩んでいるところだろう。胃のもたれは、訪日旅行客に人気だという日本の胃薬で楽になるかもしれない。だが、外交課題に特効薬はない。粘り強く国民に訴え、国民はそれに理解を示すことが求められよう。 |