金日成の後継者となった金正日は北韓を、スターリン主義体制を凌駕する戦慄すべき史上最悪の個人崇拝独裁体制に、つまり、北韓を金日成家の私有物にした。
彼は後継者への長い闘争過程で自分の後継体制を強固にするため、首領が党を代替する作業を推進し、金日成は唯一指導体制を完成した。
金正日は中・ソ紛争以降、金日成に挑戦した甲山派を粛清(1967年8月)し、軍部まで完全粛清(68年)して、「唯一思想体系確立10大原則」を提起し、74年2月、第5期8次全員会議で後継者に指名、政治委員に選出されるや、「唯一指導体系」の確立を政治局会議で公式決定した。金正日は、父の誕生日の前日の74年4月14日、自ら主唱した「全社会の金日成主義化(主体思想化)」課業推進と党の唯一思想体系確立10代原則を公布する。
「10大原則」は第6次党大会(80年10月)で党規約に含まれ、39年後の2013年の金正恩により「党の唯一的領導体系確立10大原則」に改正される。
平壤にも憲法と法律があり、その上位規範である労働党規約があるが、住民の生活を実質的に規律する最高規範は「党の唯一思想体系確立10大原則」だ。住民の思考と行動、生活を宗教のように日常的に律し、金日成王朝の神政邪教全体主義体制の「十戒」として機能している。
北韓住民は、原稿用紙50枚分のこの10大原則を暗唱、通達せねばならず、一語の狂いもなく守らねばならない。「唯一思想体系」は全党を首領の革命思想のみが唯一的に支配するようにし、首領の唯一領導の下で全党が一つのように動くことを要求する、首領の思想体系、領導体系だ。
金正日は「全社会を金日成主義化するということは、全社会構成員を皆、首領に無限に忠実な真の金日成主義者にし、金日成主義の要求通り、社会を徹底的に改造し、共産主義の思想的要塞と物質的要塞を占領すること」と宣言した。
「唯一思想体系」は首領の思想体系と領導体系に分けられるが、首領の思想体系は党内にはただ一つの思想、首領の革命思想だけがあり、他にいかなる思想も許さない。党を構成するすべての構成員が、ただ首領の革命思想を信念化、信条化し、その通りの思考を持ち、行動するとき、党内に首領の思想体系が確立したと言うのだ。
つまり、首領から各人民まで、結局、首領の思いの通りに動くのだ。首領の領導体系は、党内にただ首領の命令によってのみ、一つのように動く、革命的規律に基づく行動の一致性だ。
「10大原則」のうち2~5項は「神格化」「絶対化」「信条化」「無条件化」で集約される「忠実性の4大原則」だ。この原則は、北韓住民なら誰でも暗唱せねばならない規範、行動準則だ。北韓住民たちは、形式上は最高規範といえる党規約や社会主義憲法、その他の法条項については初歩的な知識もないが、「党の唯一思想体系確立の10大原則」は日常的な行為準則として各条項を熟知している。特に子供たちの場合、少年団から青年同盟に上がるとき、「忠実性の4大原則」を必ず暗唱してこそ加盟を許すほど、厳しく教育、統制している。
「10大原則」の第3条6項には、「敬愛する首領、金日成同志の肖像画、石膏像、銅像、肖像徽章(バッジ)、首領様の肖像画を戴いている出版物、首領を形象する美術作品、首領様の現地教示板、党の基本スローガンを丁寧に扱い、徹底的に保衛しなければならない」と明示している。
(つづく) |