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2022年03月18日 10:50
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韓国スローフード探訪69 薬食同源は風土とともに
春を待つ安東のやさしい五味子茶

 桜の開花ももうすぐ。じっと寒さに耐えてきた街路樹が春の陽射しを浴び、柔らかな芽を出す時期は本当に嬉しくなってしまう。そして、春を待つ韓国でのさまざまな出来事も思い出す。
韓国の中で最も好きな場所はどこですか?と質問されることが多く、その度に答えに迷ってしまう。ソウルも全州も済州も、どの地方にも好きな場所があり安東もそのひとつ。朝鮮時代に活躍した李退渓を輩出した儒教の里として知られている。また、安東を象徴する場所のひとつが安東河回村だ。ここは豊山柳氏一族が代々暮らし、現在も7割の人たちが一族の子孫とされている。朝鮮時代から受け継ぐ村の風景は生きた博物館とも称され、世界遺産にも登録され、多くの人たちが訪れている。
村を囲むように流れる洛東江のたおやかな流れに守られ、川岸付近では毎年10月になると仮面劇フェスティバル『安東国際タルチュム祭』が開催されている。タイムスリップをしたかのような河回村の様子は、対岸の高台にある芙蓉台から見下ろすことができる。
数年前の春先に芙蓉台から春を待つ河回村を眺めて帰る途中のこと、たまたま芙蓉台で一緒になった地元の方(ハンさん)に案内され、民泊を営んでいるお宅へお邪魔した。韓屋屋敷というか両班屋敷と呼ぶに相応しい韓屋であった。入口の扁額には『温渓』の文字があり聞くところによると、この家は朝鮮時代に活躍した儒学者の一人、李退渓の兄(号を温渓)が住んでいた所で2011年に復元されたものだった。
奥様手作りの五味子茶と韓菓
 ハンさんは「民泊をしているから見ていって」と、まるで我が家と言わんばかりに門を入り、靴を脱いで上がっていく。「ええっ」と思いながらもついて行った。足元がポカポカとしてくる。オンドルはいいな、と思いながら居間へ入ってみると「芙蓉台からの眺めは良かったでしょ。お茶をどうぞ」と奥様が待っていてくれた。「オミジャ(五味子)茶ですか」と言うと「家で作っているものですが味はどうですか」と。やや緊張していたこともあってオミジャ茶の爽やかな酸味が何とも美味しかった。
「このお菓子もどうぞ」と韓菓もすすめられ口にした。「やっぱり」そう思った。以前、手作りの韓菓をいただいた時「なんてやさしい甘さなのだろう」と思ったものだ。それ以来、韓菓の優しい甘さが好きになった。どうやら蜂蜜の使い方にあるらしい。「無添加は当たり前」これを聞く度に「韓国の食文化ってすごい!」と思ってしまう。
オミジャ茶の爽やかさと韓菓の甘さですっかりリラックス! お茶をアッという間に飲み干すと「さあ、どうぞ。たくさんありますから」と笑いながら注いでくれた。初めての客としては何と図々しい態度と我ながら思ってしまうが、それを許して下さる奥様の優しい笑顔に甘えた。
屋敷内を案内してもらい、「次は民泊で来ます」と約束し温渓宅を後にした。その後、ラインでやり取りをしながら、2020年5月に行く予定を立てたがコロナ禍でそれどころではない状態になってしまう。「あ~あ」と思っていると、昨年の3月、マスク姿の奥様の画像が届いた。嬉しかった!!
オミジャ茶は朝鮮五味子の実で、天日で乾燥させ湯冷ましした水に一晩つけ、エキスが出て透明感のある赤い色になったら濾して出来上がり、と教わった。ビタミンCが多く、疲労回復や風邪の予防にもよいとされている。
春を待つ韓国の安東でいただいたお茶とお菓子に、奥様の人を想うやさしさがあった。

新見寿美江 編集者。著書に『韓国陶磁器めぐり』『韓国食めぐり』(JTB刊)などがある。

2022-03-19 5面
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