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2021年10月06日 00:00
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キスン便り(第47回)チョンシン、チャリョ

 仕事をしている最中に、こんな話をする人が居ました。
「ウリハッキョを出たから漢字もろくに書けない。親のせいで未だに苦労する」
これを聞いて私はカチンときました。大抵のことは聞き流すのですが、これについてはさすがに、「それは違うでしょ」と言ってしまいました。
総連の学校が日本社会で必要な漢字を教えていないのは事実です。しかし日本社会に出て自分は漢字を知らないと認識したのなら、そこから先は自己責任です。漢字を覚えていくしかありません。社会に出て何年にもなるのに、それをウリハッキョのせいにはできません。ましてや自分をウリハッキョに入れた親のせいにはできません。もちろん親から暴力や虐待を受け、精神に疾患を抱えるぐらいのダメージを受けた人の場合は、本人のせいにはできません。努力する力まで奪われているのですから、親の責任は大です。
そのような例外を除いた場合について話します。ウリハッキョは日本の支援がない、あるいは少ないから私立並みに授業料が高いです。在日の貧しい親が、それでも子供たちに民族教育を受けさせたいと願って、高い授業料を払い続けたのです。親の責任は子供を卒業させるまでです。そこから先、知識が足りないと思うなら、自分で努力しなければなりません。
「自分はバカだから、やったけど漢字をたいして覚えられませんでした」
というのなら、
「大変でしたね」
と共感しますが、いま現在自分が出来ない人間であることをウリハッキョのせいにし、親のせいにするというのは、考え違いも甚だしいと、思わず説教してしまいました。
この思考パターンはすぐに犯人捜しをする韓国本国の人たちと同じです。日本を犯人にし、全てを日本のせいにして、自分は清く正しく美しいと言いつのる現在の韓国の姿に重なります。認識した事実は、価値判断の根拠には出来ない、という大原則を多くの人は知りません。
ウリハッキョは漢字を教えなかった。私が漢字を知らないのはウリハッキョのせいで私じゃない。そんなウリハッキョに入れたのは親で、親が一番悪い。こういう思考法では未来永劫進歩はないですね。
私が一世ならこう言います。俺が出来損ないだったのは事実だが、お前が出来損ないなのはお前のせいだ。もし子供が何で朝鮮人なんかに生んだんだ、と言うのなら、こう返します。生む前に言ってくれよ、そうすりゃ生まなかったのに。
親を出来損ないだと認識する能力がある者は、自分も同じにならないように努力する義務があります。
私の友人に「最悪だ」と落ち込んでいるものがいました。私はこう言いました。
「お前にはいまが最悪だと認識する能力がある。それは最悪ではない。本当の最悪は、最悪なのに最悪だと気がつけない状態だ。お前はいまが最悪だと知っている。最悪より下はない。あとは反撃するだけだろ」
そう聞いて友人は気力を回復しました。
親に対する不満を言うだけの認識能力があるのなら、自分はそれを元に、より良くなる努力をしなければなりません。親を犯人に仕立て上げて安心していてはいけません。そう思っているので、私の口癖が出ます。
一世はアホだったが、文字を知っているのに一世と同じ事をしている二世はもっとアホだ。そして私も、そんなアホな二世のうちの一人です。チョンシン、チャリョ(しっかりしろ)在日、と言いたくなります。

李起昇 小説家、公認会計士。著書に、小説『チンダルレ』『鬼神たちの祝祭』『泣く女』、古代史研究書『日本は韓国だったのか』(いずれもフィールドワイ刊)がある。

2021-10-06 5面
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