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2021年07月28日 00:00
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韓国スローフード探訪56 薬食同源は風土とともに
滋味に富む潭陽の竹筒ごはん

美しい竹林
朝から気温はぐんぐん上がり、午前中にも関わらず30度を超えている。東京オリンピック・パラリンピックの開会式も猛暑とコロナ禍の中で始まった。猛暑になるとエアコンなしではいられないのだが、天然のクーラーが恋しくなってくる。そんな事を言っている場合ではないのだが出来れば、清涼な地へ移動したくなってしまう。
数年前の真夏、ソウルからバスで全羅南道にある潭陽へ行った。所要時間は約4時間。バスから降りた瞬間、真夏の太陽が容赦なく照りつけてきた。目的地は数年振りの瀟灑園。テレビドラマの撮影地にもなっていることで広く知られている所だが、何度か足を運んでいるが飽きることはない。きっと、四季折々の美しさがあるからなのだろう。ここは、貴族階級である学者・梁山甫が1519年(朝鮮時代)に造ったもので、地形を活かしつつ、園内に小川を配すなど風雅をこよなく愛した様子が伝わってくる。園内の散策も終わりかけたころ、韓国人の友人から「竹林にも寄ってみよう」と持ち掛けられ、潭陽で最も人気の観光スポットとされている「竹緑苑」へ向かった。潭陽バスターミナルからタクシーで5分ほどのところに、5万坪という広大な竹林があった。「きれい!涼しい!」この言葉しか出ないほど感動した。真っ青な空へ向かって涼やかな竹がまっすぐに伸び、「ようこそ!」とでも言うかのように、サヤサヤと微風に揺れている。竹林の中は気温が3~4度ほど低く、天然のクーラーというだけでなく森林浴ならぬ竹林浴が楽しめる。冷涼さはもちろんだが、歩くだけで心身ともに軽やかになってくる。散策すること約1時間30分。竹林を歩いた後には、潭陽最大の楽しみの竹筒ごはんが待っている。
竹筒ごはん
 最初に竹筒ごはんを知ったのはソウルだった。店先に並んだ大きな釜から湯気が立ちのぼり、その前を通るとかすかな甘い香りがした。「竹にご飯を入れて大きな釜で蒸しているのだろう。ご飯の甘さなのだろうか? ご飯だけではなさそうだ。一度、食べてみないとわからない」…自問自答しながら通りすぎた。気になり、翌日に店に入り、竹筒ご飯の定食を注文した。バンチャン(小皿料理)やサム(包んで食べる)にする葉物野菜、キムチに続き汁物と肉料理、そして韓紙で竹筒の頭を覆ったご飯が出された。韓紙を外してみると、ふっくらご飯にナツメや銀杏、黒豆、栗が入っている。「これだ!この香り!」と納得した。店の人が、「日本人にも人気があって」と。さらに日本語で「全羅南道に潭陽という竹の産地があって、そこで考えられたご飯ですよ」と教えてもらったのが竹筒ご飯との始まりだった。
竹には抗菌作用や殺菌作用などがあり、竹の皮でおにぎりを包んだり、熊笹は器にもしたり食との関わりが深い。その竹を使ったご飯と聞くだけで、身体によさそうと思ってしまう。さらに、ナツメや銀杏などの実物、豆類が入っていることで栄養のバランスのみならず香ばしさも加わり、目でも楽しめる。また、蒸す際に余分な水滴がご飯に落ちないように韓紙を使う心遣い。このご飯とキムチがあるだけで十分なくらい満足できるメニューなのだ。薬飯のうちのひとつともいえる。
竹緑苑から店へ向かった。その日も期待どおりのご飯が出てきた。店主がやってきて「今日は肉料理も食べてみてね」と。前回は、おかずを食べる余裕がなくなってしまい、その様子を見ていた店の人がおかずを容器に入れて渡してくれた。店主は、それを知っていたのだろう。さっそく、竹筒の韓紙を取り外す。優しい甘い香りに食欲が増してくる。サムにしたり、肉料理を食べたりとおかずにも箸を伸ばしながら、ゆっくり竹筒ご飯を満喫した。
竹の持つ力、銀杏やナツメ、栗の旨味がすべて沁みこんだ竹筒ご飯は栄養価だけではなく、地産地消とともに貴族が好んだ土地らしい風流さも伝わってくるのだ。

新見寿美江 編集者。著書に『韓国陶磁器めぐり』『韓国食めぐり』(JTB刊)などがある。

2021-07-28 5面
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