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2021年04月21日 00:00
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韓国スローフード探訪50 薬食同源は風土とともに
韓半島最南端・木浦のタコ料理

 木浦を訪れたのは3度目のことだった。2010年の4月、木浦から南西に約50キロのところにある珍島の海割れを見るのが目的だった。島の沖合は複雑な潮の流れがあり、毎年、4月ごろの大潮の日に島の回洞里と沖合に浮かぶ茅島の間の海水が引いて、幅約40メートル、長さ約2キロの陸の道ができる。この現象を『海割れ』と呼び、その日は多くの観光客が訪れ、潮が引いている約1時間の間に海を歩くという珍しい体験ができる。だが、訪れたのが少し早かったようで海割れは見られず残念だったが、韓国を代表する書家・許維(1809~1893)が晩年を過ごした雲林山房に足を運んだりしながら木浦へ戻った。
市内のランドマークとなるのが儒達山と呼ばれる標高228メートルの低山。その近くには、日本統治時代に多くの日本人が暮らした一画があり、その当時を物語る建造物を見ながら漁港近くへ向かう。港の近くに目当ての食堂があるのだが、果たして店はまだ開いているのかどうか。
栄養価の高い木浦のタコ鍋
 木浦に初めて来た時は、名物料理が何なのかも知らなかった。今のようにインターネットもなかった。「何でも知りたい!」という気持ちが強く、取材はとても面白くかつ重要だった。地図原稿を作るために歩くのだが、その際に見どころや店の情報をリサーチするのが常だった。そこから取材のアポイントを入れていった。取材には、いつも通訳のチョンさんに同行してもらった。チョンさん曰く「私は木浦に来たのは初めてだけど、木浦はガンギエイとタコ料理が有名で。でもガンギエイはアンモニア臭がするからタコがおすすめ」と。「タコなんだ」と思いながら漁港周辺へ向かい、一軒の店に入ってみた。家族でやっているようなアットホームな店内。さっそくタコの鍋を頼んだ。アッという間に小さなタコがいっぱい入った鍋がコンロと一緒にテーブルにセットされた。店の人が「セバルラクチ(テナガダコ)。木浦は干潟が多くて、そこにいるのがこのタコ。たんぱくな味がするから日本人にも食べやすいはず。それとタコの中でもこのタコが最もタウリンが多いと言われているから肌もきれいになるし、疲れもとれますよ」と。
鍋に火が通り、食べごろになってきた。用意されているタレに付けて食べてみた。「旨い!」まったり感とピリ辛感のあるタレの絡み具合が何とも味わい深い。スープを飲んでみた。ほとんど調味料らしいものは入っていないのだが、優しい塩味がじんわりと五臓六腑に沁みこむ。そこに店の人がやってきた。店主のお母さんなのだろうか「日本のどこから来たの。木浦は初めて。タコ鍋はどう?」と日本語で話しかけてくれた。初めて食べたことを伝えると、テナガダコは海の高麗人参と呼ばれるほど栄養価が高いと言われていることを教えていただいた。さらに、かつての木浦の話も聞くことができた。印象深い時間だった。
果たして店はあった。リノベーションをしたのだろうか、行ってみた。午後2時ぐらいの中途半端な時間だったが週末のせいか満席に近かったが、店の人が「ここにどうぞ」とテーブル席に案内してくれた。チョンさんも一緒。タコ鍋を注文し待っていると、店主がやってきてチョンさんに「3回目ですね」と。チョンさんと店主の会話から「日本人と韓国人のおばさんコンビ」というような内容に笑ってしまった。「タコ鍋が出来るまで、これを食べて」とタコのサラダを持ってきてくれた。お母さまは高齢になり店に出ていないことや、店主の息子さんが店を手伝っていることも知った。タコ鍋を囲んでお母さまと一緒に、みんなで撮った写真を奥から持ってきてくれた。「タコを使ったさまざまな料理も増えてきたけど、昔からの食べ方が体に負担がかからない」と店主のことば。
今年も海割れの季節がやってきた。コロナが収束したら、木浦へタコ鍋を食べに行きたい。

 新見寿美江 編集者。著書に『韓国陶磁器めぐり』『韓国食めぐり』(JTB刊)などがある。

2021-04-21 5面
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