ログイン 新規登録
最終更新日: 2024-03-26 12:23:14
Untitled Document
ホーム > 連載
2021年04月07日 00:00
文字サイズ 記事をメールする 印刷 ニューススクラップ
 
 
韓国スローフード探訪49 薬食同源は風土とともに
シンプルで贅沢な江陵のカムジャオンシミ

 桜が開花し、街路樹もいつの間にか若葉が増えてきた。数年前の今ごろの時期に江原道の江陵を訪れた。オリンピック開催後とあって、ソウルからのアクセスも便利になっていた。仕事を離れ、ソウルの友人と一緒に日帰りの旅。江陵には何度か足を運んでいたが、気ままな旅は意外となかった。
列車に乗り込むと友人が「昔から江陵にあるオンシミって知っている? 食べ物だけど」と言い、「昔から知られているの?」と聞くと「そう昔から。知らない?」「うん。知らない」
ということで、その日のランチはオンシミを食べることにした。車中で友人からカムジャオンシミについて教えてもらった。
カムジャオンシミとは「じゃがいもで作る団子」のこと。
江原道地方は山岳地帯がほとんどで稲作に向かないため、昔から畑作や酪農が盛んな地域として知られている。冷涼な気候で育つジャガイモや玉ネギ、キャベツ、ソバ、豆などはどれも特産品として名高い。
口当たりのよいジャガイモで作るオンシミ
そのジャガイモをすりおろして濾すと、容器に水分がたまる。暫くすると容器の底に澱粉が残る。容器の上澄みを捨て、底に残った澱粉と濾したジャガイモを混ぜて団子を作り、それを汁物に入れて食べるというもの(すいとんに似ている)。その昔、芋をコメの代用食とした時代に考えられ、どこの家でも食べていたという。
健康志向の高い韓国で、2000年代初めごろから「ウェルビーイング」が盛んにいわれるようになり、精神的にも肉体的にも良好な生き方を目指す人々が増えた。
この現象はスローフードとも密接になり、産地がわかるもの、国産であること、農薬の有無など、食の在り方とも関係するようになった。そんな中、昔からの食べ物とされていた郷土食が見直され、「地産地消」「体によいもの」ということでオンシミも広く知られるようになった。
久々の江陵。友人から「お腹空いたね。まずはランチを」とオンシミ通りに向かった。「この通り一番古いという店があるから」と友人の弾んだ声。ソウル育ちの彼女も食べたことはなく、テレビ番組で紹介されていたから絶対に行きたいと何だか元気。店はすぐにわかった。
ランチ時は避けていたのだが、店内はほぼ満席に近く「これは無理かな」と思っていると、4人で訪れていた男性グループが「どうぞ、どうぞ。私たちは済みましたから」と立ちあがった。何度もお礼を言うと「日本からですか。食べて行ってください」と。その会話に店の人が笑顔で「お客さんがみんないい人で」こういうことが嬉しい。午後1時を少し過ぎたからなのか、店内はアッという間に静かになった。
名物のカムジャオンシミ入りのカルククスが運ばれてきた。まずはスープを一口。「おっ、ジャガイモの香り」。続いて団子を食べてみた。「まるごとジャガイモ!」優しい味が身体のすみずみまで行きわたっていく。ツルっとした口当たりの良さ。天然素材そのものをいただく贅沢さ。手間ひまをかけたシンプルな料理は、身体のバランスを整えてくれるようにさえ感じた。
ゆっくりと育ったジャガイモの美味しさを存分に味わいながら、真の贅沢をかみしめた。心も身体もゆっくりと落ち着いていく。食は、心も身体も素直にしていくのだろう。

新見寿美江 編集者。著書に『韓国陶磁器めぐり』『韓国食めぐり』(JTB刊)などがある。

2021-04-07 5面
뉴스스크랩하기
連載セクション一覧へ
金永會の万葉集イヤギ 第1回
韓国も注目の民団新体制
金永會の万葉集イヤギ 第3回
都内で「フローリア」がライブ
3機関長選 新団長に金利中氏
ブログ記事
精神論〔1758年〕 第三部 第27章 上に確立された諸原理と諸事実との関係について
フッサール「デカルト的省察」(1931)
リベラルかネオリベか
精神論〔1758年〕 第三部 第26章 どの程度の情念を人々は持ち得るか
保守かリベラルか
自由統一
北韓が新たな韓日分断策
趙成允氏へ「木蓮章」伝授式
コラム 北韓の「スパイ天国」という惨状
北朝鮮人権映画ファーラム 福島市で開催
福島で北朝鮮人権映画フォーラム


Copyright ⓒ OneKorea Daily News All rights reserved ONEKOREANEWS.net
会社沿革 会員規約 お問合せ お知らせ

当社は特定宗教団体とは一切関係ありません