北韓の金正恩が昨年12月、新たな戦略兵器の公開を告知して以来、韓国の情報当局ではMIRV、ICBM、SLBM、人工衛星などを候補として注視してきた。これら兵器システムのうち、北韓が唯一、表に出さずにいたのがMIRV(multiple independently targetable reentry vehicle=多弾頭各個目標再突入体)だ。ミサイル1基に複数個の核弾頭を搭載するMIRV技術により、多数の目標物を同時に打撃する概念だ。
これに対し、国家情報院傘下の国家安保戦略研究院に所属するキム・ボミ研究委員は、最近発表した報告書「北韓の新たな戦略兵器 MIRVの可能性と限界」の中で、「MIRVが近いうちに北韓の新たな戦略兵器として登場する可能性は低いと思われる。核強国であるという政治的イメージ形成にはプラスとなり、戦略的にも対米抑止力を強化できるため出現の可能性はゼロではない」と分析した。
これに関し、国家情報院は今年1月、国会情報委員会の委員らを対象とした報告で、北韓政権が核放棄不可、核抑止力強化持続などを「国防の目標」として設定し、新型兵器開発を推進中であると明らかにしている。当時、国会情報委員の幹事だったイ・ウンジェ議員(自由韓国党)は、記者たちに「情報当局は、北韓がMIRVの搭載が可能なICBMを開発する可能性があり、米国との関係が悪化すれば新型戦略兵器を公開するものとみている」と語った。
これに対しキム研究委員は、北韓の技術力に対し「中国もMIRV開発に着手したが、米国やロシアとは相当大きな技術力の差があるように、北韓の今の技術力で開発することは簡単ではない。MIRV能力を備えるには、追加のエンジンテストや弾頭小型化核実験など、他の兵器システムよりはるかに複雑な技術の段階を踏まなければならない」と否定的だ。
MIRVのメーンとなる、目標物への個別弾頭の正確性と殺傷力を備えた技術力の有無についても疑問符がつく。キム研究委員は「現在は、北韓が不正確かつ破壊力の低いMIRVを大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載する意味はほとんどない。軍事力強化の面では単一弾頭ICBMを大量生産する方がより実用的」と分析した。
ただし、北韓は昨年12月7日と13日に「重大な実験をした」と公表した。この実験について軍事専門家の間では「北韓が多弾頭装着のためエンジン能力の強化をテストした」と分析している。(ソウル=李民晧)
写真:昨年12月8日、米国情報衛星が撮影した北韓の西海衛星発射場一帯。米国のジェフリー・ルイス国際学研究所所長が公開 |
- 2020-03-25 3面
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