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2020年01月29日 00:00
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ノースコリアンナイト~ある脱北者の物語~23 北の旧正月の風景 伝統より金氏一族を優先

 農事暦として伝わる二十四気節の大寒を過ぎると旧正月だ。新暦より季節に合うのが旧暦で、父の影響で私はお正月より旧正月を祝うのが好きだ。
2020年1月25日土曜日は旧正月だ。祝いといっても夕食として朝鮮半島の代表的な正月料理であるトックを食べるだけで、あとは普段より早く明かりを消して横になって自分の一年を振り返ってみる。日本に来てからは北朝鮮にいる兄弟との思い出と、1年の中で一番寒いこの時季にどう暮らしているか心配で、息を静かにして無防備で虚無的な夜を送るのだ。

私の記憶では、北朝鮮での旧正月については、幼い時には旧正月と金正日の誕生日である2月16日が近くて国の祝日ではなかった。それが1989年から祝うようにと金正日の指示が出たが、東ヨーロッパの情勢で組織的な統制監視が強いので、みんなそっちに引っ掛からないように自粛していた。2003年からは連休制になったが、1995年からは北朝鮮が極度の経済難に陥り祝えなかった。

北朝鮮の伝統的な祝日に、旧正月とお盆がある。伝統とは世代を超えて受け継がれるものなのに、北朝鮮では伝統的祝日も金氏一族によって祝ったり祝えなかったりした。金日成のときは封建時代の残滓打破と、社会主義生活方式である節約と倹約に反することだとして旧正月の風習を厳しく取り締まった。北朝鮮の人々、特に金日成時代の前に生まれた人たちは心身の疲労を「伝統祝日」を口実に息抜きをしたが、それも禁じられ1年365日を辛い心境で暮らしていた。国が明るい顔で暮らしましょうと言っても、口だけ笑って目には悲しみが滲んでいた。金氏一族は社会主義下では豊かな生活ができないことを知っていたのか、一貫して政策で唱えている「社会主義生活方式」は「節約と倹約」だった。そのような指示が出されると陰でみんな「贅沢をしたことがないのに節約、倹約とは何なの」と口の中でぶつぶつ言っていた。日本で芸人がしている腹話術を、北朝鮮の大人たちがやっていた。生活している一定区域を組織単位にしている「人民班」会議で大人たちの腹話術を見て、なぜそんな言い方をするのか分らなかった幼い時はそれが面白くて不思議で真似してみたけど、とても出来なかった。物心がつく頃になって自分なりに腹話術のわけが理解でき真似してみたけど、とても難しくて出来なかった。その腹話術を日本に来て最初にテレビで見た時は驚いた。

私の家では国のルールに関係なく、父が毎年、旧正月を静かに祝った。お正月には国全体がザワザワしているし冬の低気圧の空気には糞の臭いが漂っていて、幼い私も到底お正月を祝う気分ではなかった。おそらく父も同じく、家族みんながお正月の忙しさから少し落ち着いた旧正月に歳が一つ増えるのを祝いたかったのかもしれない。北朝鮮では誕生日で歳を取るのではなく、新年で歳を取るのだ。貧しい生活ながら、普段食べられない卵フライも家族全員分が食卓にあって、父と兄と私が好きな餅、母と姉が好きな海苔巻、妹が好きなアヒル肉、おばあちゃんが送ってくれる一番上の姉が好きなソンピョン(日本の小豆餅のような朝鮮半島伝統の餅)もあって、1年の中で一番盛大に祝う日であった。

お年玉は、おばあちゃんのところに新年の挨拶に行くとお金や手作りのハンカチとかをくれて、家では兄弟が上から順に父と母にお辞儀をして、父と母が一人ひとりに昨年の良かった所、間違った所と新年に集中して欲しいところを言ってくれた。祝日のお肉は主に豚と犬の肉で、おばあちゃんが本当に大切に飼った豚と犬で、それが食卓に上がっても私は一緒に遊んだ彼ら豚と犬を食べられなかった。北朝鮮は今も週に日曜日だけが休日で、旧正月が運よく日曜日になる年は幸せ感いっぱいで前日夜からよく眠れなかった。

2020-01-29 4面
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