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2019年07月24日 00:00
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韓国スローフード探訪18 猛暑も吹き飛ぶ大邱のホルモン焼き通り
地元の女性たちにも大人気
直行便で約2時間30分。大きな丘という意味を持つ大邱広域市。北に八公山(1193メートル)、南に琵瑟山(1084メートル)を望む盆地に開けたこの街は、昔から慶尚道の中心をなしてきた。市内にある『西門市場と薬令市』は、全国三大市場のひとつとされ広く国内外に知られている。数年前、大邱に住む友人から「コプチャンは好きですか」というメールが届いた。どちらかというとあまり食べることはなかったが、理由を聞いてみると「今度、大邱で一緒に行きたいところがあるから」とのこと。きっと何かあるのだろう。大邱と言えば、タロクッパやカルグクスと思っていた。まだまだ知らないことは多いはず、と興味津々で出かけた。
大邱で目的の取材を終え友人と合流し、彼女の案内で市内南区にある『アンジランコプチャン通り』へと向かった。何でも、ホルモン焼きの店が軒を連ねている通りだという。地下鉄『アンジラン駅』を降りる。通りは、アプサン(660メートル)の裾野へと続くゆるやかな斜面が800メートルほど続き、道の両サイドにはホルモン焼きの店がズラリと軒を連ね夕暮れを前に、どの店も店先に椅子やテーブルをセットするのに大忙しといった光景が目に入った。「えっ!これが全部ホルモン焼きの店?」何とか通りというのはよくあるが、これほどのところは初めてだった。友人の説明によると、この辺りにはもともと市場があり食肉の売買も行われ、そこから沢山のホルモンが出たのを近くの飲食店が活用し、焼いて店に出したことから評判になったという。だが、時代の波が押し寄せ1990年代前半から大型のスーパーマーケットが出来始め、市場は活気を失っていった。「なんとかしよう」とホルモン焼きをしていた商店主たちが中心となり、ここをホルモン焼きの通りにしようということになった。ホルモンの協同購入を行い、どの店も500グラム単位で値段も同じに。休みも、通りの左側と右側で決め、ほぼ年中無休に近い。さらに衛生面、もてなし面なども皆で決め『アンジランコプチャン通り』の展開となったという。この努力が実り2012年に韓国五大料理通りのひとつに選出されている。
開店前の通りの様子
最初にホルモン焼きを始めたという店を目ざして行ってみると夕暮れ前にもかかわらず、若者たちで席はすでに満席。どこに座ろうかとウロウロしていると若者4人のグループが「どうぞ。どうぞ」と通りに面した席を譲ってくれた。しかも日本語だった。コプチャンがドーンと運ばれてきた。立ち込める煙の中、暑さもあるが湿気が少ないせいか夕方の空気はとても気持ちがいい。「早く食べて。こうして」と友人がお手本を見せてくれた。こんがりと焼けたコプチャン(小腸)をワケギやニンニクを入れた味噌ダレに付けて食べてみた。臭みは全くない。ほどほどの歯ごたえがある。タレの風味が、夏の暑さで疲れきっている身体に元気を注入するかのように食欲を増進させてくれる。薄切りの酢漬け大根をタレ付きのコプチャンに巻いて食べてみると、さっぱり感が増していっそう旨さが増してきた。低カロリー、ビタミン、ミネラル、コラーゲンが豊富なコプチャンを沢山の野菜とともに食べる。次第に地元の人たちとの会話も食も弾み、元気と人情をもらった大邱の一日となった。それ以来、美肌効果も期待しつつ真夏のパワーチャージに足を運んでいる。
新見寿美江
編集者。著書に『韓国陶磁器めぐり』『韓国食めぐり』(JTB刊)などがある。
2019-07-24 5面