韓半島の「1953年体制」がようやく終わろうとしている。先週フロリダで開催された米中首脳会談では、金正恩体制の運命が議論された。米国は、北韓の核ミサイル実戦配備を、1962年のキューバ事態に比肩される深刻な脅威として受け止めているという。米国のトランプ大統領は就任以来、北韓の核ミサイル事態をここまで悪化させた中国を圧迫し、中国もいよいよ金正恩体制を放棄する雰囲気であると伝えられる。
トランプ大統領は、自国民を化学兵器で攻撃し、殺傷したシリア政府を直ちに攻撃した。トランプ政権は、米国の安全と利益だけでなく、人類の良心への挑戦に対して躊躇せず膺懲した。シリアに化学兵器を販売してきた北韓と、金正恩体制を庇護してきた中国に対する警告でもあった。正常な国家なら、国際社会の最大の頭痛の種である金正恩が整理されることに反対する国はないはずだ。文明国なら、北韓住民がついに奴隷状態から解放されることを歓迎するしかない。
暴圧体制を終息させる過程で、もし軍事的手段がやむをえず動員されても、決して不当であると考えない。それは基本的に、金正恩体制が自ら招いたものだ。金正恩が米国に対抗するための核ミサイル実戦配備に執着すればするほど、金正恩体制によって脅威を受ける側も、金正恩を危険な存在と規定するのは当然だ。しかも、化学兵器を使用して、他国の国際空港で兄弟を暗殺する金正恩の手に核ミサイルが握られるのを阻止しようとするのは当然だ。
ところが、この金正恩に忠誠を誓う組織が日本の中にある。朝総連は平然と、隠しもせず、金正恩を称え、支持している。朝総連は単なる結社ではなく、暴圧体制を支える後継世代を育成している。朝鮮大学校こそ、まさに首領の革命戦士を養成する機関だ。
朝総連は朝鮮大学校を民族教育の精粋と自慢するが、その正体は狂信的忠誠を要求する組織だ。韓国には3万を超える脱北者が住んでいる。もはや北韓に関するいかなる秘密もない。朝総連も同じだ。過去60年あまり、数十万人の同胞が朝総連を離脱した。朝総連組織がいくら嘘をついても本質を隠せない。最近、朝総連が隠したがる秘密を書いた回顧録が出た。
朝鮮大学校の副学長だったP氏が書いた回顧録だ。彼が朝総連活動家として悔恨の一生を振り返る記録は首領独裁がどこから間違ってきたのかを赤裸々に見せてくれる。貴重な証言であるため、その内容を数回に分けて紹介する。まず、結びの方から見てみよう。
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私は二〇世紀から二一世紀の激動の時代に、在日朝鮮人社会科学者のひとりとして、時代が織りなした、さまざまなドラマに遭遇した。いま思うと感無量である。
私はかつてマルクス主義に心酔し、社会主義の優越性を信じて疑わなかった。社会主義ソ連に憧れ、地上の楽園北朝鮮に夢を託した。
(中略)私は生涯を通じて分断朝鮮を止揚し、統一朝鮮を実現する、遠大な夢を見てきた。東西ドイツ、南北ベトナムは国土と民族の統一を成し遂げたが、わが祖国だけは南北分断の悲劇を克服できず、後世に歴史の負荷を背負わせてしまった。現代を生きた倍達民族(朝鮮の源泉)の政治家、知識人は、私もふくめて、みなその責めを負うべきだろう。
現代を生きた知識人のひとりとして、時代を予見できず、統一に貢献できず、右往左往した自身を顧みて、赤面し、落涙するばかりである。
私はこの激動の時代を生きた在日朝鮮社会科学者として、社会科学の真理を求め、現実の改革に役立とうと努めてきた。私は植民地朝鮮に生を受け、分断朝鮮の激流に翻弄され、玄海灘を渡り、ここ日本で社会科学を志した。愛知大学で社会科学の基礎を錬磨され、朝鮮総連の構成員となり、朝鮮大学校の教職に就いて活動した。七〇年代に運命的な転機が訪れた。千里馬朝鮮のイデオロギー、主体思想との出会いであった。よく師、よき学友に恵まれ、主体的世界観の研究に邁進した。主体思想の伝道師として世界を駆け巡った。充実した研究生活の日々であった。しかし九〇年代に事態は暗転した。私の主体思想研究が権力者から異端として断罪され、追放された。懊悩した。そして決断した。人間中心の哲学思想、主体思想の純潔性を守る側で生きよう、学兄との信義を裏切らず良心を守って生きよう、と。そして学友たちとの討論で研磨した人間中心の世界観、博愛の世界観を完成させよう、と (つづく) |