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2017年03月08日 20:47
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脱北帰国者が語る 北の喜怒哀楽
政治犯収容所の解体(1)

 1991年4月ごろだったと記憶している。当時、私は社会安全部傘下の「革命戦跡地踏査管理所」で働いていた。革命戦跡地踏査管理所といっても、読者の方はどのような役割を任された機関なのか、分からないと思う。
革命戦跡地踏査管理所は、犯罪などを取り締まる安全部の傘下ではあるものの、主な仕事は全国4カ所にある踏査地の管理・運営である。月に1回ほどの頻度で、各地にある安全部から、10人に満たない程度のグループが「革命戦跡地」に送られてくる。全国から集まった200人ほどのグループは、4カ所を回りながら思想教育を施され、再び自分たちの職場に戻る。そこで、革命戦跡地で見聞きした内容をほかの職員に伝えるのである。
管理所では、各地から来る安全部職員のガイドや施設の保守・点検を行っていた。そのため、人民軍所属の第7総局工兵部隊の軍人も勤務していた。
革命戦跡地を回らせたのはなぜか。私見であるが簡単に見解をまとめてみた。
まずは金日成の抗日武装闘争史を学ばせることにより、代を継いだ革命を継承・発展させて完成に導くことが挙げられる。第二に、安全部員や軍人を、革命思想で武装させることだ。金日成主義、主体思想、金正日の唯一指導体系を徹底して信じさせることで、体制の熱烈な擁護者や不撓不屈の革命闘士に育てるのが目的だ。
安全員や軍人が選ばれたのは、いうまでもなく彼らが世襲独裁制度を維持するための重要機関だからである。彼らの統制が崩れれば独裁体制は崩壊するしかない。まさに国の命運を左右する問題である。
革命戦跡地踏査管理所の安全員は、一般の安全部員よりも階級が高かった。少尉は運転手の4人だけで、ほかの指導員は中尉から中佐の階級章をつけていた。所長は大佐であった。
施設も立派だった。食堂や宿泊施設も備わっている建物は3階建てで、屠殺場や倉庫もあった。運動場も併設されていた。
私は友人の紹介でそこに職を得たのだが、以前炭鉱で培った旋盤や修理、溶接の技術が評価されたことも一因だった。管理所には車や機材を修理する工場や製材所があったためだ。
私のような非役人は、1年ごとに別の労務者と交代となり、主要建設部門に配置される。そこで1年間の仕事を終えれば、再び管理所に復職するという制度だった。
私は91年4月ごろに、咸鏡北道鏡城郡の管轄区域にある政治犯収容所に派遣された。任務はそこの解体であった。しかし出発前までは、鏡城郡から三池淵郡まで続く山間部の道路工事に行くと知らされていた。自宅で服や洗面道具、毛布や筆記道具を準備し、出発当日の朝に市行政委員会の中庭に集合した。
120人ほど集まった作業員は、その場で三つのグループに分けられた。各グループは軍隊式に「中隊」と呼ばれることになった。国家的な建設事業に動員される際は、軍隊式の指揮体系に編成されるのが常だった。中隊の下に小隊、その下に分隊が置かれた。
鏡城郡は、咸鏡北道の道都である清津市の南に隣接し、清津市南部の羅南という町には朝鮮人民軍第6軍団の本部が置かれていた。日本帝国陸軍の第19師団(歩兵師団)が本部を置いた地でもある。つまり、軍事的な要衝であった。
羅南には有名な製薬工場があった。90年代に道党責任秘書だった姜成山が金日成の承諾を得て作ったアヘン工場である。アヘンは、外国に密売されていたという。
鏡城郡は70年代まで、朱乙と呼ばれていた。かつて朝鮮半島の東北部を占領統治していた女真族の命名である。朱乙は「南方の住みよい場所」という意味だったようで、咸鏡北道にしては温暖で、塩分津と呼ばれる景勝地付近では魚もよく獲れ、山に入れば陶磁器作りに適した粘土が手に入る土地だった。朱乙といえば何よりも温泉だった。昔の人にとっては、まさに理想郷に近かっただろう。
(つづく)

2017-03-08 5面
 
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