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2017年03月02日 00:54
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脱北帰国者が語る 北の喜怒哀楽
「美女狩り」担当5課(3)

 「記述書記」という選抜された美女についても述べたい。全国から集められた美女の中でも、最上級の女性は金正日の招待所(別荘)に配置される。「第2ランク」は、軍部の司令官や軍政治局長、副主席、組織部長級ら幹部のもとに行く。彼女たちが「記述書記」だ。
記述書記は地方から選抜された20歳未満の若い女性で、事前に一定の接待教育、常識的な医学知識、健康管理法、言語礼節の教育を受けてランク別に配属されていた。基礎任務は幹部の執務室の隣にある部屋に常駐し、電話や訪問客の対応、幹部の外出時の服装チェックまでさまざまな身の回りの世話をする。秘書のようなものである。
金日成時代には、老齢の幹部につく「担当看護員」という制度が設けられた。金一、崔庸健、金東奎、呉振宇、李乙雪、崔光、白鶴林、林春秋など、党軍事部門の要職にいたのは、抗日パルチザン闘争をしていた「革命一世代」だった。「担当看護員」は、幹部の身の回りの世話だけでなく、健康管理をしていた。幹部が行く先には必ず随行する義務と責任を負っていた。
この制度を廃止し、70年代末に「記述書記」制度を導入したのが金正日だ。記述書記は外国への出張時も同行する。そして幹部と同じ部屋で寝ることが義務づけられている。
常識的に考えると浮蕩行為の極みだが、彼らにはそれなりの言い分がある。老いた幹部が夜中に突如体調を崩した場合の応急手当のためだ。それが「記述書記」の基本任務のうち必要不可欠なものになっていた。ただ、それ以上の内幕がどうなっているのかは、読者の想像や判断にお任せする。
もし日本で政治家や官僚の同衾が明らかになったらどうなるだろうか。いずれにせよ北朝鮮の独裁者と権力層は、こうした制度を合法化・義務化したのである。
10代の女子学生を対象にした「美女募集」は、国家的に毎年計画され、行われているが、選抜される学生側も安易な考えで平壌へ行きたがる。幹部の世話をしたり、美味しい食事をしたり、奇麗な洋服を着ていい暮らしが送れるのだから、同級生や同じ年頃の女性の間で羨望の的になる。だから合格すれば誰もが行きたがるのは当然である。
特に地方では社会労働や愛国労働をしても無報酬であるし、生きる希望はない。しかし、平壌の幹部の書記になれば一生豪華な生活ができる。地方の女子学生は、職もなく苦労するなら平壌に行くのが一番の上策だと話している。
ちなみに5課対象は、女性ばかりではない。背が高く、眉目秀麗な男子であれば、ホテルや高級レストランのドアマンや給仕、高級料理の調理人となり、いずれは支配人として外国に出店する機会もある。
私は娘が対象になるまで、中央党5課の噂を幾度か耳にしたことはあった。ただ、特段の関心はなかった。しかし娘が5課対象として学校で面接を受けた直後に除外されたので、一体5課とは何をしているのか気になり、その方面に詳しいある女性から未知の世界の話を聞いたのだった。
その女性は清津芸術専門学校1年生(19歳)の時に選抜され、5年間の「記述書記」を経て24歳で平壌の市党幹部の息子と結婚させられ、1男1女の母になった。一度故郷の父母に会いに来た時に、内緒話として聞かせてくれたのである。「記述書記」は23歳で辞めなければならない。そして機密厳守のため、指定された社労青(社会主義労働青年同盟)の幹部と結婚させられるのだという。
女性たちは、まさか年寄りの幹部の侍女や情婦のような生活を強要されるという深い内情までは知らなかった。だから誰もが5課の選抜対象になることを願っていた。
ただ、内部事情を知っていたとしても、率先して手を挙げる女性はいるだろう。一般社会では結婚後の女性がどれだけ苦労するか、彼女たちの年齢になれば知っていた。それが目に見えているから、決断するにあたって戸惑うことはなかったのかもしれない。
(つづく)

2017-03-01 5面
 
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