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2016年11月16日 09:17
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在日の英雄 義士 元心昌37
李栄根との出会い 1959年 統一日報創刊

統協指導者と亡命統一運動家の結合

 統協(南北統一促進協議会)組織の衰退で、遅々として進まない統一運動に新たな活路が見えはじめたのは、1958年5月だった。 元心昌氏はその頃東京で、李栄根氏と出会った。
李氏はその年の1月”進歩党事件”が起きて本人が仕えていた、竹山・曺奉岩がスパイ疑惑で逮捕されると、入院中だった病院から脱出した。それから数カ月の逃避生活を経て、4月頃に釜山から密航船に乗って日本に渡った。救命のための、政治的亡命だった。  李氏は東京到着から間もなくして元氏に会うことになる。李氏は元氏との出会いを次のように述懐した。
「(元心昌)先生に初めて会ったのは1958年5月だった。李承晩政権下の韓国から日本に亡命して1カ月足らずのある日、神田陸橋下の小さいホルモン焼き屋の2階だった。当時先生は、1955年からの統協運動が左右の板挟みにあい、やむを得ず衰退した後、やっと数カ月に一回ずつ通報のようなものを発行して『統協』の看板だけを維持していた時だ。先生と私は会った日から、まず統一運動の宣言・啓蒙のための新聞を発刊して、それをもとに統一維新の組織を作ろうということで意見が一致した。そして翌日から(そのことに)着手した」(1971年8月18日付本紙3面「元心昌先生の闘争と基本精神」の中から)
二人が、誰の紹介でどのように会ったのかは具体的に知られていないが、この日の出会いは統一運動史において、歴史的な瞬間だった。日本でかろうじて命脈を維持していた統一運動勢力である統協メンバーらと、韓国の統一運動革新系の人々が結合するきっかけとなったからである。
元心昌氏と李栄根氏の意気投合は、即座に結果として表れた。その年9月。東京の西神田にある専修大学近くに小さい事務室を借りて、「朝鮮統一問題研究所」の看板を掲げた。続けて同年12月。本紙『統一日報』の前身である『朝鮮新聞社』を設立し、翌年の1月1日に創刊号を発刊した。
「同新聞社は李承晩政権の弾圧を避けて日本に亡命してきた統一運動家と、統協の指導的な人々によって創設された」(1966年7月6日付本紙2面)
当時の統一日報の陣容を見てみると、元心昌氏は代表委員業務主幹、李栄根氏は主筆、編集長は康鉉哲氏が引き受けた。代表取締役は張基承という人物だった。彼に関する詳細はほとんど知られていない。ただし「経歴は不詳だが良心的経済人。京都の同胞」という資料がある(歴史学者松田利彦の2016・6月論文『1950年代末~1960年代における在日韓国人の民族統一運動、「統一朝鮮新聞」の分析を軸に』)
明らかな事実は、統一日報創刊を主導した核心的人物は、元心昌氏と李栄根氏の二人だったという点だ。筆陣をはじめとした陣容が、二人の人脈で構成されていたからである。
元心昌氏とともに新聞創刊に参加した統協メンバーは、日本植民地時代には労働活動家であった、全海建神戸支局長と許昌斗大阪支局長、祖国の中立国家論者である李千秋論説主幹などだ。李栄根氏の人脈では、1961年に筆陣に合流する孫性祖氏(民族日報事件でその年10月、日本に政治亡命)などが挙げられる。元氏はこの時も「統協」の看板を大切に保管していたと伝えられている。それは、統協の継承活動の一環として、新聞創刊の先頭に立ったと解釈することができる。
統一日報(当時朝鮮新聞)は1959年1月1日付創刊号の中で、「創刊にあたった同胞に告ぐ」を通じて発刊趣旨を次のように明示した。
「今日の現実、昨今の現象はどうか? 国土は南北で分断されて、民族は左右に分裂している。単純に二分されているだけではなく、強大陣営の尖兵となって激しく対立している。(中略)私たちはまず祖国の平和統一に対する民族的意志を統一して、その声を一つにしなければならない。そうすることではじめて民族内部が結束されるものであり、世界の世論が高まり真の統一を勝ち取ることができるだろう。私たちは国内外すべての愛国同胞に対して、祖国の平和統一のためにもう一度決意を新たにして、私たち国民の正しい声を結集することを訴える。この訴えのために私たちの新聞『朝鮮新聞』は生まれた。(中略)平和統一への道! それは民族が生きていくための、たった一つの道だ。愛する同胞よ、苦しくて堂々としたこの道を、ともに手を取り合い進もうではないか。1959年1月1日、日本で朝鮮新聞社同人一同」
統一運動紙であり、統一啓蒙紙『統一日報』が、世の中に初めてその存在を表わした瞬間だった。
(つづく)

2016-11-16 4面
 
在日の英雄 義士 元心昌36
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