北韓が朝鮮労働党創建71年にあたる10日、核実験やミサイル試射の実施を見送った。韓米軍当局は10日に合わせ、偵察機を増強するなど警戒態勢を強めていた。北韓が党創建を静かに祝った背景は何か。
北韓は今年に入り、金正恩の誕生日(1月8日)前に4回目の核実験を行い、金正日の誕生日(2月16日)の前には長距離弾道ミサイルを発射するなど、重要な記念日に挑発を強行してきた。9月の5回目核実験も、北の建国記念日だった。
だが10日、金正恩は金日成と金正日の遺体が置かれている錦繍山太陽宮殿の参拝すらしなかった。健康不安説が取り沙汰されていた2014年以来のことだ。
北韓が挑発に出なかった背景としては、国連安全保障理事会で北韓に対する制裁強化の議論が続いており、「中国への刺激を避けた」といった分析がある。また、11月8日の米大統領選後に発足する次期政権をにらんで、核・ミサイル能力を誇示するため選挙後に挑発を仕掛けるという見方もある。さらに、米国が違法であるかどうかにかかわらず北韓と取り引きする全ての企業を制裁対象とする「セカンダリー・ボイコット」の実施策を講じていることも影響したとみられる。
北韓としては国連の追加制裁への対応や次期米政権に強硬なメッセージを送るため、最も効果的なタイミングを探っている可能性が高いとみられる。
韓国・東国大北韓学科の金榕炫教授は「北の核実験やミサイル発射は米国と国際社会に向けたものだ。最も効果的に衝撃を与えるために、米大統領選挙や次期米政権発足の前後に挑発をする可能性が高いと予想される」と分析した。
一方、韓国軍合同参謀本部によると、北韓は15日午後12時半ごろ、北西部で新型中距離弾道ミサイル「ムスダン」とみられるミサイルを発射し、失敗した。15日まで韓国周辺の海域で行っていた韓米合同軍事演習への対抗措置との見方がある。また、米国務省でラッセル次官補が、「(金正恩は)核攻撃を行う能力を持てるかもしれないが、そうなれば直ちに死ぬことになる」と発言したことへの反発ともみられている。 |