韓米の金正恩に対する全方位的圧迫の輪郭が鮮明になった。以前は、金正恩の「統治資金」を枯渇させ、金正恩を人道犯罪者として断罪するのが主な方策だったが、今は、北韓に情報を入れて、北韓住民と金正恩を分離し、金正恩政権を外交的に徹底して孤立させる措置を取り始めた。北韓住民の解放も宣言した。韓米の圧迫に金正恩が反発すれば、軍事的衝突もありうる。
北韓の核武装を阻止するための20年以上の外交的努力は完全に失敗した。国連安保理を通じての対北制裁・圧迫も中国の「サボタージュ」のため決定的効果が期待できないことが確認された。
今になって中国の行動を振り返って見れば、中国はどうも当初から北核を中国の対米核戦略の一部として見なし、活用しようとしてきたのではないかとすら思える。
つまり、中国が戦略的に金正恩体制を維持すると決めた以上、中国の協力を前提とした北核の廃棄という構想は、当初から間違った認識に基づいた前提だったのだ。これは中国側がTHAADミサイルの韓国配備に激しく反対することで証明された。
韓米同盟としては結局、中国の妨害を克服する道を模索せざるをえなくなった。国連の枠の外でも独自の対北圧迫を強化する方向に旋回した。
7月に金正恩とその暴圧機関を人権犯罪者と指定した米国務省は先月、各国の米公館に命じ、駐在国に北韓との外交・経済関係の断絶・縮小を要請するようにした。この前例のない措置は、9月28日の聴聞会で、国務省東アジア・太平洋地域担当ダニエル・ラッセル次官補が明らかにした内容だ。
米国が独自に講じ始めた対北経済・金融制裁、いわゆるセカンダリー・ボイコット(対象者・機関だけでなく、そこと取引した第三者も制裁対象となること)は、国連安保理制裁よりも厳しく、中国企業も逃れ難い措置だ。中国当局が、遼寧省・丹東にある「鴻祥実業発展有限公司」など、北韓に兵器開発の関連物資を輸出した疑惑のある企業に対する調査を許しているのは、腐敗根絶を掲げている習近平の政治的必要性と同時に、北核問題への中国の協力ぶりをアピールしようとする狙いだ。
韓米の努力によって国際原子力機構(IAEA)は9月30日の総会で、北韓は核保有国の地位を持てないという決議を70カ国の満場一致で可決した。米国としては韓日で起きている核武装論を抑えるためにも北核の実戦配備を阻止せねばならない。
韓国も金正恩に対する全方位圧迫をかつてなく強化しはじめた。尹炳世外交部長官は国連総会の演説(9月22日)で、北韓の国連会員国資格を取り上げた。
就任以来、親中的路線を維持してきた朴槿惠大統領は、駐韓米軍将星らを招待した午餐会(9月30日)で、「韓米同盟は韓半島の防衛のための軍事同盟を超えて世界平和と安定に寄与するグローバルな同盟、包括的戦略同盟へと成長している」と強調した。金正恩と北韓を庇う中国への警告だ。
そして、「国軍の日」の記念辞で、北韓住民の人間としての尊厳が尊重され、幸福を追求できるよう最善を尽くすことと、北韓住民がいつでも自由な韓国へくることを歓迎すると宣言した。朴大統領の北韓住民へのこのメッセージは、第6共和国28年間の左傾化路線に終止符を打つ出来事であり、憲法に反する「6・15宣言」と「10・4宣言」の事実上の破棄宣言でもある。 |