金正恩を人権犯罪者に指定した米政府が、対北圧迫をさらに強化した。国務省は今年の2月に発効した「対北制裁強化法」によって、先月の末まで「対北韓情報流入報告書」を上下院に提出したという。安保理決議2270号による経済・金融制裁の実効性が疑われる中、北韓住民と金正恩を分離する措置に出たのだ。金正恩体制の「レジームチェンジ」への第2弾だ。
ワシントンの外交筋などによれば、国務省がまとめた「対北韓情報流入報告書」は8月末までに、上下両院の外交委員会に提出されたという。事案の性格から詳細な内容は公開できないものだが、今年2月に発効した「対北制裁強化法」は、「北韓住民たちが接近を制限されず、検閲を受けずに値段の安い大量情報通信手段を構築する計画が提示された機密報告書を関連常任委員会へ報告せよ」と明示している。
今まで試みられてきた、ラジオやタブレット機器といった情報端末に加え、DVDやUSBメモリーなどの電子記録媒体を北韓に入れる方法も含め、米国は来年から5年間で、年間800万ドルを北韓の「情報自由化」政策に投じる計画だといわれる。国連安保理決議2270号が決めた対北圧迫・制裁措置が、中国側の「サボタージュ」によって実効性が弱まる中、金正恩を人権犯罪者に指定したオバマ政府が金正恩体制と住民を分離する戦略に出たのだ。
そもそも、今の中国共産党政権は金正恩体制の崩壊を望んでいない。それは、現在の米中対決構図の下では、北韓が核武装をしても中国としては対米戦略上決して捨てたくないからだ。
ここ20年以上の経験から、もはや金正恩体制の核兵器を除去する方法は現実的に二つだけしか残っていない。物理的に除去する方法と、レジームチェンジだ。だが、物理的な除去を試みれば、米中の衝突の可能性がある。ならば、残された選択肢はレジームチェンジのみだ。
米国務省が金正恩を人権犯罪者に規定したのは国連総会の決議内容に基づいての措置だった。国連総会の決議内容は、中国も反発・無視し難い点を利用したといえる。そして、韓国当局も対北心理戦を大幅に拡大する計画だ。
要するに、金正恩体制を延命させることを目標としている中国と、金正恩体制のレジームチェンジを追求する韓米同盟・海洋文明圏との対決構図になる。
もし中国当局が韓米同盟などの「対北韓情報流入」作業を妨害すれば、中国は人権弾圧国家になり、東アジアの対決構図も一気に複雑になる。中国が韓国のレジームチェンジ戦略に反発すれば、韓国は生存のため独自の核武装をするしかないからだ。中国は金正恩体制を放棄するか、それとも韓国の核武装を認めるかを選択せねばならない。 |