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2016年08月31日 15:36
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朝総連衰亡史(11)
朝総連はなぜ「裏切り者」を告訴しないのか

 前回、朝総連の無謀・無差別な対南工作が数千人の在日の人生を狂わせたと書いたが、人生を狂わされたのは、対南工作に直接関与した者とその家族だけだったのか。朝総連が北送した9万3000人とその子孫、および縁故者の苦痛を考えれば、野蛮な金氏王朝とそれに盲従してきた朝総連は、在日同胞はもちろん、韓半島に住むすべての人々の運命を狂わせた。もちろん、金氏王朝と朝総連を直接・間接的に支援してきた者も、この反文明的体制を持続させてきた責任を免れない。
これまで何人もの元「朝総連工作員」が、平壌と朝総連の罪状を暴露した。そのたびに、北側と朝総連は、彼らを裏切り者と罵倒し、彼らの主張(暴露)が南朝鮮当局と結託した捏造だと非難した。
だが、朝総連と平壌側は、「裏切り者」を一人も法廷に告訴しなかった。もちろん、多くの朝総連活動家も、法的に「裏切り者」の主張に反論したことがない。これは、朝総連が今までいわゆる彼らの権益を保護し勝ち取るために、さまざまな事案において日本の法廷に訴訟を提起してきたことと比べれば非常に対照的だ。
朝総連と平壌側が裏切り者を言葉だけで非難・罵倒するのは、言うまでもなく「裏切り者」たちの主張がすべて事実であるからだ。
『「在日」の精神史3』の著者・尹健次氏は、朝鮮労働党に直結した工作組織「洛東江」の工作員・張龍雲の自叙伝について在日の「精神史」という意味で触れている。関連部分を紹介する。
総連傘下の商工会の専任活動家だった張龍雲は、一九七二年以降、朝鮮労働党直結の在日地下組織「洛東江」に所属し、活動資金の調達や潜入工作員の指導等、諸活動にあたる。その自叙伝『朝鮮総連工作員―「黒い蛇」の遺言状』(小学館文庫、一九九九年)でいわく、「工作員はどのような場合にも(中略)上司には絶対服従である。上司の指令を受けるときの心理は、「命が凍る」という表現が適当であった。(中略)工作員は一度この世界に足を踏み入れると、そこから脱出するのは極めて困難である。それは、組織が厳しく統制されていることにもよるが、権力の美酒を一度味わうと、どうしても感性がマヒするためでもある」。そして現在日本と北との間で最たる政治問題となっている日本人拉致について、「日本人の拉致事件は一九七〇年代後半に集中している。これは金正日が対南工作を担当して以来のことである。日本人を拉致する目的は北朝鮮の工作員が日本人になりすまして、戸籍を取得し、日本人の正規のパスポートを手に、韓国に「侵入」するためである。そのほか、北朝鮮国籍では出入りができない世界の各国に自由に出入りすることもあった」と述べている。
この張龍雲の話は、総連からすると「謀略」ということになろうが、記された内容は迫真に満ちたものであり、そう簡単にウソだというわけにはいかない。「朝鮮総連の活動家」と「労働党直結の工作員」は一応別に考えるべきかもしれないが、末尾の「解説」(高世仁)に記されているように、張龍雲にとって「工作員」とは「革命家」を意味する誇るべき称号だった。(しかし)身を粉にして尽くしてきた「革命」が、同胞にとっても日本にとっても悲劇しかもたらさないと知ったとき、彼は自分のこれまでの人生を否定するという、勇気ある辛い選択に踏み切ったのである。ここで、いまや「禅僧のように枯れた風情の初老の男」になったという張龍雲の言葉をもう一度引用しておきたい。
「祖国統一に対する北朝鮮の思想に民主主義が大きく欠落している点に、統一を妨害する重大な欠陥があると指摘したい。(中略)この点から見れば、少なくとも韓国は統一の基本的準備は終えていると思う。韓国内に階級的矛盾が存在していることは事実であるが、だからといって北朝鮮のいう絶対矛盾という性格のものではない。むしろ韓国は、その矛盾の解決の過程で民主化が進展している。今や祖国統一は、民主主義を守るのか、それを否定するのかという戦いになってしまった」
金大中政権成立後の一九九九年という時点で、韓国が果たして統一の基本的準備を終えた段階にあったのかどうか、韓国の民主化がどの程度確かなものだったのか、議論の余地はあるが、ここでいま私は敢えて、張龍雲の言葉を否定するつもりはない。(以上『在日の精神史3』111、112ページから)。(つづく)

2016-08-31 5面
 
朝総連衰亡史(10)
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