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2016年08月15日 10:27
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朝総連衰亡史(10)
数千の「在日」の人生を狂わせた対南工作

 東西冷戦が激しかった時期、いわゆる「在日政治犯」の問題は、主に日本を発信地として大々的に浮上したのは、社会主義圏が自分たちの無慈悲なスターリン主義独裁、全体主義の実態を隠すため、逆に展開した、自由陣営の最前線だった韓国こそ「米国が支援する非道な軍事独裁体制」という政治謀略キャンペーンの一環だった。
今も多くの人々が社会主義圏が作った韓国の「野蛮な軍事独裁体制」とこれに抵抗した「民主化運動」という俗説を信じているが、このような大衆的イメージ作りには、少なからぬ在日作家たちの「作品」が寄与した。『在日の精神史』の中で、「在日政治犯問題」の裏面や根源と関連して書かれている内容の一部を以下に紹介する。

元・総連新潟県本部副委員長だった張明秀の『徐勝―「英雄」にされた北朝鮮のスパイ』(宝島社、一九九四年)には総連組織による対南工作の数々の例が記されている。徐勝のことはもちろん、弟・俊植や韓国から東大に留学した金栄作、その他、総連の活動家による、あるいは総連を通さずに、新潟港に停泊する帰国船の船上で本国の幹部が直々に、留学同や韓青同、韓学同、それに科学者協会などを指導する場面が語られている。そこには労働党工作責任者である許鳳学、ついで金仲麟の名が出てくるが、総連に籍を置く者は、全員が対南工作員としての裏の顔を持たされていたとまで記されている。(中略)
とにかく、総連、民団、帰化者を問わず、当時、片っ端から工作の手が延びていたと言ってもそう間違いではなく、朝鮮大学校もそうした活動の拠点のひとつとして位置づけられていたと考えてよい。実際に、私の間接的な知り合いに、朝鮮大学校を優秀な成績で卒業したあと地下活動に従事し、その後挫折したあと、東京・上野の家業・朝鮮乾物店を継ぐも、経営が破綻して僧侶になった者がいる。このことは多くの人が知っている「愛国一家」の辛い話である。
南北の対立・緊張がまだ続いている中、こうした話が普通に語られるにはまだ早いのだろう。しかし対南工作ないしは「政治犯」「スパイでっち上げ」などについては在日朝鮮人の文学で李恢成や金石範、金鶴泳などが取り上げている。金石範の『過去からの行進』上・下(岩波書店、二〇一二年)は、軍政末期、韓国に留学した在日韓国人・韓成三が突然、南山(KCIA)に連行され、激しい拷問を受ける物語である。(中略)金鶴泳は、自死する直前に『郷愁は終わり、そしてわれらは』(新潮社、一九八三年)を出している。両親の墓参りと兄との対面のために祖国・共和国を訪問した帰化日本人が、最後は合弁会社を設立して韓国でスパイ容疑で逮捕される物語である。
李恢成の場合、朝鮮新報社を辞めて総連を離脱する一九六〇年代末、そして七〇年代のことを自伝的小説『地上生活者』第四部〈痛苦の感銘〉で書いている。第四部の表紙の帯には「「愚哲」(李恢成)が組織を離れたそのときの秘密がいまはじめて開示される」との宣伝文句が印刷されている。どこまで事実でどこまでフィクションか見定めにくいが、『地上生活者』全体はやはり「事実」に基礎した「物語」であると考えてよい。そこでは総連傘下の留学同の後輩たちが何人も、突然組織を離れて、韓学同、そして南に入っていくことについての記述がある。またそこに「宋東奎」なる人物が登場するが、総連の元活動家である金奎一のことである。公金を横領したとか、幹部夫人を籠絡したとか、当時から噂されていたが、(中略)総連離脱後、宋東奎(金奎一)は朝鮮労働党員となり、地下組織で「革命」「統一」のために活動するが、李恢成はその宋東奎と深いつながりをもつ。(中略)
総連の絶頂期であった一九六〇年代はもちろん、南北のパワー・バランスに逆転が生じていく七〇年代以降も、総連は共和国に直結し、膨大な財力と人材を使って対南工作を続けていく。それは総連が「在日」を顧みない硬直化現象を起こしていく時期でもあり、しかも時代が下るにしたがって、総連の焦りは深まっていく。しかしそれでも、その期間、北・総連の活動家は、光州事件などで、南に対して優越感をもって活動したといえ、事実、一九八七年の韓国での「民主化宣言」まで、韓国は独裁政治のもとにあって、対南工作の余地が大きかったのではないかとさえ思われる。私なりに荒っぽく推測するなら、本人のみならず家族を含めて、おそらく数百どころか、数千の「在日」の人生が狂わされたのではないかと思う。(『在日の精神史』107~111ページから)
(つづく)

2016-08-15 14面
 
朝総連衰亡史(9)
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