日本人女性、まさ子(一二) 「それは駄目です。柳さんはもとから意地っ張りだから、話を持ちかけてかえって怒らせでもしたら元も子もなくなります。今慌てて持ちかけるよりは、二人がいつも接触するような機会を作ってあげて、身も心も結ぶようにする以外、他の方法はありません」 まさ子は、主人と母親の相談の結果、看護を口実に一日も欠かさず私の家に送られてきたのだ。 今日は母がイシモチ(グチ)を一匹、牛肉もいくらか買ってきた。イシモチの切り身は牛肉と一緒に醤油であっさりと煮付け、頭部と背骨はかぼちゃと一緒にコチュジャンを加えて煮た。そして、たくあんと納豆もすこしずつ準備した。納豆は、大豆を煮て、そこに菌を加えて壷に入れ、発酵させると、クモの巣のような糸が張るが、日本人が好きなおかずの一つだった。 暫く匂いが部屋中にしたが、そこへ母が昼食を持って入って来た。 「まさ子さん、食事にしよう。昨日はコチュジャンを食べさせてすまなかったけど、今日は母が貴女の好きなおかずをたくさん作っておいたから、口に合うものを取って食べなよ」 私が先に箸を取った。まさ子も私にならって匙を手にすると、膳を見渡して驚いた。 「あら。今日はどうしてこんなにたくさん準備なさったの?」 「さあ、食べなさい。おまえに食べてもらおうと準備したんだから、たくさん食べなさいね」 「はい、オモニ。たくさんいただきます」 まさ子は何がそんなに楽しいのか、おかずを一つずつ取りあげては、これは何? あれは何? といちいち尋ねる。母はそのたびに必ず、一つひとつ答える。まさ子はあれこれとつまんでみたが、イシモチの頭をコチュジャンで煮たものが一番美味しそうである。 「そう、美味しければたくさん食べなさい」 まさ子はやや辛そうにしていたが、思いきってそれに手を伸ばした。 「辛いはずなのに、どうしてそんなにたくさん食べられるの?」 「辛くても美味しいんです。オモニ」 「そう。よかったわ。たくさん食べてちょうだい。そうしたら私も作った甲斐があるってものだわ」 「はい、オモニ。ごちそうさま」 食事が終わった。まさ子が膳を持って腰を上げようとした。 「まさ子さん、そのままにしておきなさい。私が片付けるから」 「いいえ、オモニ。私がしますわ」 まさ子がそのまま膳を持って出てゆくと、母も後をついていった。母とともに後片付けを終えてから、まさ子が一人で戻ってきた。柳根瀅 高徹 訳 馬瑞枝 画 |