韓半島が日本の植民地支配から解放され、国民主権の「建国革命」という新しい歴史を迎えられた瞬間、北韓には民族史最大の悲劇が訪れていた。独立国家の建設を熱望していた多くの韓国人は、人間社会では実現しがたい共産主義や社会主義社会という幻想に騙され、全体主義独裁体制に服務した。 韓半島の北にスターリン主義が移植された以降の歴史は、今日、私たちが見ているとおりだ。だが、「総連60年の大衆講演資料」が繰り返し強調している「首領観」は、全体主義を正当化している。 北韓のような社会では、自らの過ちを反省、改善することができない。張成澤と玄永哲の処刑に見られるように、首領主義では自分たちと異なるすべての考えを否定する。異教徒を処刑するIS(イスラム国)とどこが違うだろうか。 朝総連は「結成60年大衆講演資料」で首領主義を強調している。その内容を引用する。 「活動家たちと同胞たちを共和国政府のまわりに集結させるための重要な事業として、まず当時<解放新聞>の復刊(1952年5月)、朝鮮通信社の再建(1953年1月)、朝鮮問題研究所の創設(1952年10月)など、政治宣伝機構を整備補強する事業から活発に展開してきました」(講演資料6ページ) 「総連は何よりも、組織の中に偉大な大元帥様たち(*金日成、金正日)と敬愛する元帥の思想体系、領導体系を立てる事業を最も重要にとらえ、そのための事業を優先的に進行してきて、今日も強力に展開しています」 「総連組織が確固として立てている根本原則は、主体の思想体系、領導体系を総連組織内に徹底的に確立することです」(講演資料26ページ) 朝総連は彼らが「社会主義祖国の隆盛発展のために積極的に寄与してきました」(講演資料23ページ)と強調するが、在日同胞の多くはこの60年間、朝総連の強要を否定・拒否してきた。数多くの「越南者」や「脱北者」たちと同様に、朝総連結成以来、約90%の同胞が自由を選択し「脱朝総連」を決行した。 金正恩の兄である金正哲が先週、ロンドンで開かれたエリック・クラプトンの公演を観覧するため、ボディガードを連れて現れた。南韓(韓国)のビデオを見るだけでも公開処刑の対象になる北韓で、資本主義の文化に深く染まった”特権貴族層”の頂点にいるのが、まさに首領と血を分けた兄なのだ。朝総連はまさか、ロンドンに現れた男性は首領の兄でないと否定できるだろうか。 金正日の料理人として有名な藤本健二氏が証言したとおり、北韓のロイヤルファミリーは、皆が贅を尽くしている。もっとも、朝総連も最高幹部の子どもたちは、韓国籍を取得し、韓国に留学までさせている。平壌と朝総連の”貴族”たちは、一般住民とは異なる基準が適用される特権階層なのだ。 朝総連は去る60年間をこう結論づけている。 「総連の60年は、偉大な首領・金日成大元帥様と偉大な領導者・金正日大元帥様、そして敬愛する金正恩元帥の優れた領導と手厚い愛と配慮で一貫した領導愛の栄光の歴史です」 「これからも総連は優れた首領の領導を仰いで総連運動を展開して行かねばならないということ、これが最大の教訓です」(講演資料28ページ)。 朝総連は今後も皆が「金正恩元帥の領導に従い、総連組織の周りに固く団結し同胞たちの幸福と後代の輝かしい未来のための愛族愛国運動に力強く乗り出しましょう!」と同胞に要求している。貴族に仕える奴隷のような生き方ではないか。 (続く) |